日本映画の斜陽がささやかれて久しい。
黒澤、小津、溝口以外に世界に誇れる映画はないのか? ハリウッドに通用するようなアクションは『七人の侍』(1954年)以外ないのか?固唾を飲んでハラハラドキドキできる、そんな日本映画はないのかー?
それがあるのである。我らがが健さん主演の『新幹線大爆破』だ!!!知っている人は知っているだろうが、知らない人には全く知らない映画だろう(当たり前だ)。
なぜこの作品は傑作たりえたのか。結論から言うなら、日本人好みな人情モノのエッセンスと、手に汗握るアクションが奇跡的に融合したからである。
社会に矛盾を感じ、高度経済成長の中で弱者を切り捨てて行く日本政府に挑戦すべく、経済大国ニッポンの象徴的存在・新幹線に爆弾をしかける高倉健。
新幹線の乗客を人質に身代金を要求、犯人と国鉄側の息詰まる駆け引きが展開される…と思いきや、中盤以降は健さん率いる犯人グループにフォーカスを当てた、熱い人間ドラマに変貌していく。
犯人と対決する国鉄サイドのトップを演じるのは宇津井健。乗客の命を預かるという立場で、次々と降りかかる危機的状況を冷静な判断で打開していく姿には、神々しささえ覚える。
そして新幹線の車掌を演じるのは、これまた輪をかけて熱い千葉“ソニー”真一。ソニーの演技は、すっかり軟化してしまった現代の軟弱野郎どもに強烈な鉄鎚をくらわすことだろう。
健さん、宇津井、ソニーの最強スリートップ夢の共演。スゴイぞこりゃ。
新幹線が通常に運行していれば問題ないが、時速が80キロを下回ると爆弾が自動的に爆発する、というプロットもナイスなプロットなり。
あれ?でもどこかで聞いたような設定だよな…と思ったら、あのキアヌ・リーヴスのヒット作『スピード』と激似ではないか。
『スピード』では爆弾がしかけられるのは市営バスだったが、このアイデアはあきらかに『新幹線大爆破』から着想を得たに違いない。『スピード』のような大ヒット作の元ネタが、昔の邦画にあったというのは嬉しくなる。
重厚な人間ドラマと計算しつくされたサスペンスが融合したこの作品は、世界に恥じないメイド・イン・ジャパンのアクションムービーである。
ここまで書いたら観たくなってきただろう。さあ、TSUTAYAに急げ!
- 製作年/1975年
- 製作国/日本
- 上映時間/153分
- 監督/佐藤純彌
- 原案/加藤阿礼
- 脚本/小野竜之助、佐藤純彌
- 撮影/飯村雅彦
- 音楽/青山八郎
- 美術/中村修一郎
- 編集/田中修
- 特殊撮影/小西昌三、成田亨
- 助監督/岡本明久
- 高倉健
- 山本圭
- 宇津宮雅代
- 宇津井健
- 千葉真一
- 小林稔侍
- 渡辺文雄
- 竜雷太
- 丹波哲郎
- 志村喬
- 志穂美悦子
- 鈴木瑞穂
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