ソニー・ロリンズが奏でる、おおらかな泰然自若ジャズ
朗々と歌い上げるかのようなソニー・ロリンズのテナー・サックスは、とにかくでーんと構えていて、泰然自若としていて、悠々緩々としている。
「底抜けに明るい」ということではない。暖かい大地ですくすく育ったかのような、生粋のおおらかさがあるのだ。聴いているこっち側が神経をすり減らすような、ジョン・コルトレーンの求道者的アプローチとは正反対である(若干ディスっているような書きぶりになってしまいましたが、筆者はジョン・コルトレーンも大好きであります)。
この陽性な感じ、ひょっとしたら、彼の母親の祖先がヴァージン諸島出身という出自に関係があるのかも。もしくは、ハードバップ全盛の時代に活躍したジャズ・ミュージシャンにしては珍しく、一切ドラッグをやっていなかったことが要因か。とにかく、開けっぴろげで淀みのない、ポジティヴなビバップなのだ。
そんなソニー・ロリンズの泰然自若サウンドを最も楽しめる一枚が、『Saxophone Colossus』であることに異論はないだろう。彼にとって6枚目のアルバムに当たる本作は、モダンジャズの歴史の上でも重要な位置を占めている。
M-1の『St. Thomas』から、もうゴキゲン。マックス・ローチが刻むカプリソのリズムに乗せて、スタッカートでサックスを吹き込むソニー・ロリンズ。その間を縫うようにトミー・フラナガンが鍵盤を鳴らし、ダグ・ワトキンスが太いベースラインで下支えする。超一流カルテットを率いて、極上のハートウォーミング・ジャズが繰り広げられるのだ。
M-3『Strode Rode』もええですね。ソニー・ロリンズが作曲したこのナンバーは、シカゴ時代に入り浸っていたクラブの名前に因んだもの。彼が吹くテーマにマックス・ローチが音符ごとにリズムを打ち鳴らすオープニングから、疾走感がハンパない。
そして突然ピアノとドラムが抜けて、ダグ・ワトキンスの子気味いベースをバックにしてソニー・ロリンズのソロが展開されるのだが、これがまたカッコいいのなんの。豪放磊落なインプロヴァイゼーションに、こっちもニコニコしっぱなしである。
ソニー・ロリンズが奏でる、おおらかな泰然自若ジャズ。とにかく楽しい。面白い。面白きことは良きことなり!
- アーティスト/Sonny Rollins
- 発売年/1956年
- レーベル/Prestige Records
- St. Thomas
- You Don’t Know What Love Is
- Errors
- Strode Rode
- Moritat
- Blue 7
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