元プロ・スケートボーダーがドロップした、昼下がりの午後的倦怠感
世界にはあまたのワールド・ワイド・ウェブが存在するというのに、こんな辺境のポップカルチャーサイトの駄文を読んでいるキミは、きっとイケてない非モテ男子&女子に違いない。
でも安心してくれ、僕もそうさ。中学生の時にイケてないグループに所属していた一人だよ。頭もたいして良くないし、かといって腕力があるわけでもないし、トキメキやキラメキとはてんで無縁の哀しきスクール・デイズを送っていたものさ。
そんな僕にとってプロ・スケートボーダーなんていう輩は、一生お友達にはなれそうもない人種だった。だいたいストリート・カルチャー周辺って、オレオレ系で鼻持ちならない厚顔無恥な奴らばっかでしょ(多分にヒガミあり)。
伝説のプロ・スケートボード・チーム、ボーンズ・ブリゲードの一員として10代の頃から脚光を浴び、イケてる青春時代を謳歌したトミー・ゲレーロも、トーゼンその内の一人。
独学でギターとベースを学び、気鋭のミュージシャンとしてソロ・アルバム『Loose Grooves & Bastard Blues』(1997年)をリリースしたと知っても、そんなもん全く食指が動かなかったんだが、2ndアルバム『A Little Bit Of Somethin’』(2000年)を聴いてみてビックリ。ベックやトータスにも近似した、ジャジーかつダウンテンポな音像がそこに存在していたんである。
スケートボーダーとしてならしただけあって、ハイテンポのアッパーなヒップホップが展開されると思いきや、その正体はユル系のアブストラクト・サウンド。控えめなBPMに合わせてグルーヴィーなギター・リフが鳴り響き、その気持ち良さに思わずウトウトしてしまう。
まるで西海岸の爽やかな風が、スケボー初心者の僕の体を優しく後ろから押しやってくれるかのような、不思議な心地よさがあるのだ。M-5の『100 Years』なんぞ、激しい運動のあとのアフターパーティーのような、昼下がりの午後的倦怠感に満ちているじゃありませんか。
しかしゲレーロの紡ぐサウンドは、一見爽やかながら、どこか病巣的な匂いがする。オーガニック&アコースティック系ミュージシャンという立ち位置で、何かと比較されることの多いジャック・ジョンソンが、いかにも健康的なサーフ・ミュージックを次々にリリースしているのとは、実に対照的。
世俗を離れ、大海原で爽やかな空気を存分に吸い込むサーファーとは違い、街のあらゆる毒素や臭気を吸い込んでライディングするスケートボーダーは、知らないうちにダウナーな空気を肺に溜め込んでしまっているのかもしれない。
音楽というものはそれだけで美しく屹立していても、何の説得力も持ち得ないものだ。そんな訳で僕は、ジャック・ジョンソンよりもトミー・ゲレーロを強烈プッシュするものであります。
- アーティスト/Tommy Guerrero
- 発売年/2000年
- レーベル/Mo Wax
- Blue Masses
- Four TRK Samba
- Tiny
- Numb Milleneum
- 100 Years
- Pescadito
- Azucar
- Flux and Meter
- It’s Raining Again
- Today Like Everyday
- Soul Miner
- As the Sea Holds Creatures Vast and True
- So Blue It’s Black
- Little Chin
- Exzebache
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