スウェーディッシュ・ポップの巨人・トーレ・ヨハンソンが綿密な設計図を引いたこの和製シンガーは、実は「Surprise!」なんかを聴くとソウルフルなヴォーカリストであることが良く分かる。
柔らかで優しさに溢れた音楽設計からは想像もできない程、ボニー・ピンクの歌詞世界は痛切で内省的。
胸をえぐられそうなほどの「ギリギリ感」が漂っていたが、99年に発表した『Let Go』では、チボ・マット、エルビス・コステロなどのプロデュースで知られるミシェル・フルームをプロデュースに迎え、美大生アーティスト系の密室的サウンドから、空間的に奥行きのあるふっくらとしたサウンドにシフトチェンジ。
グルーヴィーで弾けるようなサウンドには「いろいろあったけど、ふっきれたんだね」等と一人で勝手に頷いてしまう程の内的変化を感じさせる(本人も『ボニー・ピンクとしての第一期は終了、第二期が開始』と語っているらしいが)。
そして04年、98年の『evil and flowers』以来、久々にトーレ・ヨハンソンと強力タッグを組んだアルバムとしてドロップされたのが「Even So」だ。
ボニピン第三期の開始である。そのリリックも、人生一回りして(って言うほど彼女はトシとってないけど)驚くほどシンプルかつ力強いものになっている。
痩せた指にキスをした
あなたをずっと忘れないよ
たとえ離ればなれでも
最後のキスを覚えているよ
覚えているよ
(Last Kiss)
ボニー・ピンクの「ボニー」はおそらく、『俺たちに明日はない』で非業の死を遂げたボニー&クライドからきているのだろう。87発の弾丸を浴びて死んだ彼等よりも、彼女のほうが人生をまっすぐに見つめている気がする。
切ない歌詞にも、未来に希望を託している真摯な姿勢が感じられる。黒髪に戻したボニー・ピンクはびっくりする程愛らしい。
アーティストイコンとしてのボニー・ピンクから、一人の女性シンガーとしてのボニー・ピンクのほうが僕は好きである。
- アーティスト/Bonnie Pink
- 発売年/2004年
- レーベル/ワーナーミュージック・ジャパン
- Private Laughter
- Ocean
- New Dawn
- 5 more minutes
- The Answer~ひとつになる時~
- I just want you to be happy
- Mint
- 1・2・3
- Last Kiss
- Walk with you
- 人生ゲーム
- Bedtime Story
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