単調なビートにぶっきらぼうなギター・リフが重なる、凶暴なガレージ・ロック
もう20年くらい前になるが、僕が知り合いに呼ばれてスタジオのバンド練習に行ったとき、ドラムを担当していたのが、ヘアメイクを本業とする美人なお姉さんだった。
これだけカワイイのにボーカルとかギターとかじゃくて、ドラマーという縁の下の力持的ポジションを担当していることに、妙に感動してしまったことを覚えている。
何と言いますか、ドラムを選択するという行為そのものに、職業的プロフェッショナリズムを感じた訳です。それ以来、美人ドラマーがいるバンドは、条件反射的に応援してしまうクセがついてしまった。ゲスの極み乙女。の ほないこか とか、SILENT SIRENの梅村妃奈子とか。
そんな意味で、愛らしいルックスとちょっと太めながら、グラマラスなバディーを併せ持つ、ホワイト・ストライプスのメグ・ホワイトは気になる存在だった。
ギター兼ヴォーカルのジャック・ホワイトとは姉弟ということらしいのだが、妙に近親相姦的な匂いがプンプンしてくるし、「二人はデキてる」だの「実は元夫婦」だの、二人の関係を憶測する記事は後を絶たない。それだけWhite Stripesはセクシャルなパフュームを芳香しているのだ。
そもそもアートワークが赤・白・黒の3色しか使っていない時点で、デカダンで退廃的なムードがムンムン。何でも、20世紀初頭に流行した構成主義の手法を取り入れているとのコト。
コカ・コーラのカラーリングにも通じる強力な色の組み合わせによって、いやがおうにもジャケットに目は吸い寄せられ、彼らの仕掛けた罠にずぶずぶとハマっていってしまう。
初のメジャーレーベル作品となる『Elephant』(2003年)は、製作期間10日間&総費用60万円という、インディーズばりの環境で製作されたアルバム。
ヴォーカル、ギター、ドラムという極端に削ぎ落とされた2ピースバンド・サウンドは凶暴なまでにリスナーの身体に浸食し、あらゆる理性を破壊しまくる。
メグ・ホワイトが刻む単調なビート(彼女は単にテクニックがないだけなのか?それとも計算なのか?)に、ガシガシとしたぶっきらぼうなギター・リフが重なるだけなのに、そこから生まれるニュアンスはとろけるように甘く、人工着色料を入れまくったお菓子のように毒々しいのだ。
ガレージ・ロックには全くシンパシーを感じない僕が、ホワイト・ストライプスには五体がビンビン感じてしまうことは、自分でもちょっと不思議だった。音数が抑えられているだけ、全体のサウンドを自分なりに補完して、多少なりともポップなテイストに変換してしまっているのかもしれない。
彼らのコンセプト・カラーは赤・白・黒の3色だけだが、リスナーの脳内で描かれる色数はもっとカラフルで、もっと豊穣である。
- アーティスト/White Stripes
- 発売年/2003年
- レーベル/V2 Records
- Seven Nation Army
- Black Math
- There’s No Home For You Here
- I Just Don’t Know What To Do With Myself
- In The Cold, Cold Night
- I Want To Be The Boy…
- You’ve Got Her In Your Pocket
- Ball And Biscuit
- The Hardest Button To Button
- Little Acorns
- Hypnotise
- The Air Near My Fingers
- Girl, You Have No Faith In Medicine
- It’s True That We Love One Another
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