清潔でよく磨かれた純白のキッチンのような、ピースフルでクワイエットな空間
80年代~90年代にかけてイギリスで巻き起こったムーヴメント、セカンド・サマー・オブ・ラヴ。
若者たちは、’67年のヒッピー・ムーブメント「サマー・オブ・ラブ」の再来を信じ、野外や倉庫で肩を寄せ合っては愛を語り、ケミカルドラッグを吸引し、アッパーな日々を過ごしていた。ドラッグの取締りが厳しくなって、そのムーヴメントは90年代半ばには終息してしまうのだが。
そんな時代と呼応するように、90年代にアンダーワールドがアルバム『Dubnobasswithmyheadman』(1994年)や、『Second toughest In The Infants』(1996年)で提示したのは、レイヴ・カルチャーと共振した、ドラッギーでトランシーなトラックだった。
もともとFreur(フルール)というロックバンドを出自としているだけに、ギターをサンプリングしたフレーズが登場したりと、プログレな楽曲も満載。キレ味鋭いスマッシュビートが、オーディエンスをフィジカルに覚醒させたんである。
しかし、ゼロ年代を飾る(同時にダレン・エマーソン脱退後初となる)アルバム『A Hundred Days Off』(2002年)は、過去のディスコグラフィーと比較して、よりふわっとした清涼感が強調されている。
別にチルアウトしたという意味ではない。アッパーなビートはキープされているものの、音と音の隙間の余剰感が膨らみを増し、まるでアルカリイオンのシャワーを浴びているかのような心地よさがあるんである。
『A Hundred Days Off(100日間のお休み)』という珍妙なタイトルは、リック・スミスの子供が
「100日に1日しか学校に行かずに住んだらどんなに素晴らしいだろう!」
と話したのがキッカケであるらしい。「これはすばらしいアイデアだと思ったんだよ。実際、僕たちは休養が必要だった」とカール・ハイドは語る。
巷のリラクゼーション・ミュージックのようにスローテンポでもないし、アコースティックなサウンドでもないが、このアルバムには、清潔でよく磨かれた純白のキッチンのように、ピースフルでクワイエットな空間が広がっている。
- アーティスト/Underworld
- 発売年/2002年
- レーベル/V2 Records
- Mo Move
- Two Months Off
- Twist
- Sola Sistim
- Little Speaker
- Trim
- Ess Gee
- Dinosaur Adventure 3D
- Ballet Lane
- Luetin
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