カラフルでヌーディーな開放感に溢れた、サマー・チューンズ
デビュー当初は、ファンク&ソウル系のトラックを自らの作詞・作曲で歌ってきた一十三十一。山下達郎をフェイバリット・アーティストに挙げる彼女は、次第にサウンドもシティポップに接近。
流線形ことクニモンド滝口による『TOKYO SNIPER』(2006年)に「江口ニカ」名義で参加してからは、その傾向にさらに拍車がかかった。
テン年代以降は、『CITY DIVE』(2012年)、『Surfbank Social Club』(2013年)、『Snowfbank Social Club』(2014年)、『Pacific High / Aleutian Low』(2014年)、『THE MEMORY HOTEL』(2015年)と、1年おきに夏感&リゾート感溢れるシティ・ポップをリリースしてきた彼女が、充電期間を経て2017年に発表したのが、この『Ecstasy』(2017年)なり。
このアルバムのナニがいいって、本作のプロデュースを務めたDorianによる、独特なエキゾチシズムに溢れたエレクトロ・サウンドである。ホント最高。マジ最高。
マーティン・デニーやレス・バクスターなど、エキゾチカ・ミュージックに傾倒していたという彼の音楽的嗜好が、よりポップな装いをまとって、ハイの音域でキラキラ輝いている。
当初は一十三十一自身も、彼が全体を監修するくらいのイメージでいたという。フタを開けてみれば、オールトラックの作曲・編曲を手がけるという、完全に“Dorian”色で塗り固められたアルバムに。
この音楽職人が、気鋭のサウンドメイカーとして注目を浴びたきっかけになったのは、七尾旅人とやけのはらが2009年にリリースした『Rollin’ Rollin’』だろう。
ダウンテンポなビートにのせて、浮遊感のあるサウンドと乾いたスネアが鳴り響く。そして何よりも音色が気持ち良い。僕も当時は、このナンバーがDorianプロデュース・ワークであることはつゆ知らず、ただただその気持ち良さにシャブ漬け状態となり、iTunesのヘビロテに相成った記憶あり。
一十三十一のインタビューによれば、「もっと人を裸にさせるような、より開放的なものを」という想いで『Ecstasy』の製作に臨んだという。北海道出身なのに、どこまでも夏推しって!
確かにこのアルバムには、一糸まとわぬ姿で海に飛び込みたくなるような、ヌーディーな開放感に溢れている。特にM-3『Flash of Light』は、J-POPの歴史でも最強のサマーチューンの一つ、と断言しよう。
あとどうでもいいことですが、一十三十一(ひとみとい)と、口ロロ(クチロロ)と、!!!(チックチックチック)をちゃんと読めるかどうかが、僕の中でその人が本当に音楽ファンかどうかを判断する踏み絵になってます。
- アーティスト/一十三十一
- 発売年/2017年
- レーベル/BILLBOARD RECORDS
- Ecstasy
- Serpent Coaster
- Flash of Light
- Discotheque Sputnik
- Let It Out
- Moonlight
- Blue, Midnight Blue
- Galanterie
- Swept Away
- Varadero via L.A.
最近のコメント