“法被を着たレッド・ツェッペリン”による、唯一無二の我流ロック
正直ナンバーガールにはあまり食指が動かなかった僕が、ZAZEN BOYSには脳天を打ち抜かれた。2007年6月16日に日比谷野外音楽堂で行われたワンマン・ライヴには、会社の同僚と駆けつけたものだ。
これまさに、シャブ漬けになったハイテンション親父の唯我独尊オンステージ。向井秀徳の研ぎすまされた知性と、酩酊状態のアッパラパーな狂気が渾然一体となった、唯一無二の我流ロック。
向井が理想のバンド・サウンドを求めて設立したプライベート・スタジオMatsuri Studioで、Matsuri SessionをシバきアゲてきたZAZEN BOYSは、生温いロックに浸っていたリスナーの肝胆を寒からしめた。
もともとは、秋田県秋田市出身の女性シンガーソングライターhalのバックバンドととして結成されたのが母体。Kicking the Lionの吉兼聡をギターに、ART-SCHOOLの日向秀和をベースに迎え、本格的にバンドとして始動。
2003年のRISING SUN ROCK FESTIVALでのお披露目ライブを経て、2004年1月10日にリリースされたデビューアルバムがこの『ZAZEN BOYS』(2004年)なんである。
向井秀徳はZAZEN BOYSを自ら“法被を着たレッド・ツェッペリン”と評したそうだが、確かに念仏ともおぼしき独特の浪曲風ヴォーカリゼーションは、諸行無常な歌詞とも相まって、ドメスティックな世界観を構築している。しかしヒップホップ、ソウル、ダブと、ファンクネスを第一義にしたサウンドはR&Bの匂いが濃厚。
変拍子バリバリの複雑怪奇ドラミング、甘美な轟音をかき鳴らすエレキギター、ドスの利いた絶叫の背後に、カーティス・メイフィールドやスライ&ファミリーストーンといったミュージシャンの姿が見え隠れするのだ。
実際、M-1『Fender Telecaster』やM-11『KIMOCHI』で向井が披露するファルセット・ボイスなんぞ、ほとんどプリンスでしょ。
小学校低学年の時に、兄貴からプリンスのアルバムを無理矢理聴かせられたというエピソードがある向井秀徳だけに、ある意味R&Bへの偏向は原点回帰なのかもしれない。
ちなみに、今やZAZEN BOYSの代表曲となった『KIMOCHI』だが、ライヴでは公私ともに親交のある椎名林檎を召喚して、ファルセット部分を担当してもらうこともしばしば。
僕はたまたまCX系音楽番組『僕らの音楽』(2004年〜)で二人のコラボを観たんだが、向井の非感傷的なギターソロ、林檎の艶のあるヴォーカル&変態的リリックがナイスな邂逅を果たしていて、実にナイス。youtubeのヘビロテと相成ったのである。
- アーティスト/ZAZEN BOYS
- 発売年/2004年
- レーベル/Matsuri Studio
- Fender Telecaster
- USODARAKE
- The Days Of NEKOMACHI
- YURETA YURETA YURETA
- COLD SUMMER
- 開戦前夜
- INSTANT RADICAL
- MABOROSHI IN MY BLOOD
- IKASAMA LOVE
- SI・GE・KI
- KIMOCHI
- WHISKY & UNUBORE
- 自問自答
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