この上ない清冽さと、魅惑的な無重力感。The Sea And Cakeのさらなる洗練と成熟
『The Sea and Cake』(1994年)、『Nassau』(1995年)、『The Biz』(1995年)、『The Fawn』(1997年)、『Oui』(2000年)…。The Sea And Cakeは、豊穣な音楽性とワン・アンド・オンリーな個性を、ポスト・ロックの文脈で誇示してきた。
前作から3年のブランクを経てリリースされた6thアルバム『One Bedroom』(2003年)は、丸みを帯びたソフトロックの核はキープしつつ、エレクトロニカなエレメントも自然に取り込み、さらに洗練と成熟を極めた作品に。
モジュラー・シンセが奏でるループに触発されて生み出されたという、魅惑的なフレーズ。このギター・ワークが、アルバム全体にこの上ない清冽さと、魅惑的な無重力感を付与しており、アート・ロック+ジャズ・ロックといった風情の強かった初期アルバムと比べて、ポップ・アティチュードが格段に増した印象。
個人的ベスト・トラックのM-5『Shoulder Length』は、極端に音数を抑えたミニマルなギター・リフが耳に残る、本作の特質を最も端的に表しているナンバーだろう。
ラストを飾るM-10『Sound And Vision』は、’77年にデヴィッド・ボウイがリリースしたアルバム『Low』に収録されていたナンバーで、彼らにとって初のカバー曲。
サム・プレコップ、アーサー・プレウィットに加え、Aluminum Groupのフランク&ジョン・ネイヴィン兄弟をコーラスに迎えた、「オッサン4人」によるハーモニー。にもかかわらず、暑苦しくならず清涼感すら感じさせるのは、シカゴ音響派周辺のメンバーだからこそなし得るマジックか。
原曲が内包していたグラム・ロックのダウナー&ビザールなテイストを徹底的に血抜きし、浮遊感のあるテンダー・チューンに仕上げているのは、さすがの手つき。
The Sea And Cakeが奏でるサウンドからは、澄んだ風景が瞬く間にたちのぼってくる。「Sound And Vision」とは、そのものズバリの彼らのキャッチフレーズだ。
- アーティスト/The Sea And Cake
- 発売年/2003年
- レーベル/Thrill Jockey
- Four Corners
- Left Side Clouded
- Hotel Tell
- Le Baron
- Shoulder Length
- One Bedroom
- Interiors
- Mr. F
- Try Nothing
- Sound & Vision
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