『One Bedroom』(2003年/シー・アンド・ケイク)
楽曲背景と意味を深掘り考察・批評・レビュー
『One Bedroom』(2003年)は、ザ・シー・アンド・ケイクが発表したアルバム。アルバムを象徴する「Four Corners」やタイトル曲の「One Bedroom」に見られる、幾層にも重なるシンセサイザーのレイヤーと、サム・プレコップの透明感あふれるヴォーカル。それらは、都会的な孤独感と安らぎが同居する、唯一無二のサウンドスケープを描き出している。また、デヴィッド・ボウイの「Sound & Vision」(1977年)を原曲の鋭利さを保ちつつ、彼ららしい軽妙なグルーヴで再解釈したカバーは、本作の音楽的ハイライトの一つと言えるだろう。
タイトルの「ワン・ベッドルーム」が示す通り、本作に通底するのは、手の届く範囲にある日常を慈しむような親密な眼差しだ。複雑なリズム構造を内包しながらも、聴き心地はどこまでも涼やかで穏やか。ポスト・ロックの実験性を、洗練されたインディー・ポップへと昇華させた本作は、2000年代における都市型リスニング・ミュージックの最高到達点の一つである。
この上ない清冽さと、魅惑的な無重力感。The Sea And Cakeのさらなる洗練と成熟
『The Sea and Cake』(1994年)、『Nassau』(1995年)、『The Biz』(1995年)、『The Fawn』(1997年)、『Oui』(2000年)…。The Sea And Cakeは、豊穣な音楽性とワン・アンド・オンリーな個性を、ポスト・ロックの文脈で誇示してきた。
前作から3年のブランクを経てリリースされた6thアルバム『One Bedroom』(2003年)は、丸みを帯びたソフトロックの核はキープしつつ、エレクトロニカなエレメントも自然に取り込み、さらに洗練と成熟を極めた作品に。
モジュラー・シンセが奏でるループに触発されて生み出されたという、魅惑的なフレーズ。このギター・ワークが、アルバム全体にこの上ない清冽さと、魅惑的な無重力感を付与しており、アート・ロック+ジャズ・ロックといった風情の強かった初期アルバムと比べて、ポップ・アティチュードが格段に増した印象。
個人的ベスト・トラックのM-5『Shoulder Length』は、極端に音数を抑えたミニマルなギター・リフが耳に残る、本作の特質を最も端的に表しているナンバーだろう。
ラストを飾るM-10『Sound And Vision』は、’77年にデヴィッド・ボウイがリリースしたアルバム『Low』に収録されていたナンバーで、彼らにとって初のカバー曲。
サム・プレコップ、アーサー・プレウィットに加え、Aluminum Groupのフランク&ジョン・ネイヴィン兄弟をコーラスに迎えた、「オッサン4人」によるハーモニー。にもかかわらず、暑苦しくならず清涼感すら感じさせるのは、シカゴ音響派周辺のメンバーだからこそなし得るマジックか。
原曲が内包していたグラム・ロックのダウナー&ビザールなテイストを徹底的に血抜きし、浮遊感のあるテンダー・チューンに仕上げているのは、さすがの手つき。
The Sea And Cakeが奏でるサウンドからは、澄んだ風景が瞬く間にたちのぼってくる。「Sound And Vision」とは、そのものズバリの彼らのキャッチフレーズだ。
- アーティスト/シー・アンド・ケイク
- 発売年/2003
- レーベル/スリル・ジョッキー
- ジャンル/ポスト・ロック、インディー・ポップ
- プロデューサー/ジョン・マッケンタイア、ザ・シー・アンド・ケイク
- 1. Four Corners
- 2. Left Side Clouded
- 3. Hotel Tell
- 4. Le Baron
- 5. Shoulder Length
- 6. One Bedroom
- 7. Interiors
- 8. Mr. F
- 9. Try Nothing
- 10. Sound & Vision
- The Biz(1995年)
- One Bedroom(2003年)
- Everybody(2007年)
- Car Alarm(2008年)
![One Bedroom/シー・アンド・ケイク[CD]](https://popmaster.jp/wp-content/uploads/41bAfOqhgbL-e1707315970738.jpg)
