2017/9/30

『One Bedroom』(2003)徹底解説|洗練された電子音響

『One Bedroom』(2003年/シー・アンド・ケイク)
楽曲背景と意味を深掘り考察・批評・レビュー

10段階評価
7
GOOD

『One Bedroom』(2003年)は、ザ・シー・アンド・ケイクが発表したアルバム。アルバムを象徴する「Four Corners」やタイトル曲の「One Bedroom」に見られる、幾層にも重なるシンセサイザーのレイヤーと、サム・プレコップの透明感あふれるヴォーカル。それらは、都会的な孤独感と安らぎが同居する、唯一無二のサウンドスケープを描き出している。また、デヴィッド・ボウイの「Sound & Vision」(1977年)を原曲の鋭利さを保ちつつ、彼ららしい軽妙なグルーヴで再解釈したカバーは、本作の音楽的ハイライトの一つと言えるだろう。

タイトルの「ワン・ベッドルーム」が示す通り、本作に通底するのは、手の届く範囲にある日常を慈しむような親密な眼差しだ。複雑なリズム構造を内包しながらも、聴き心地はどこまでも涼やかで穏やか。ポスト・ロックの実験性を、洗練されたインディー・ポップへと昇華させた本作は、2000年代における都市型リスニング・ミュージックの最高到達点の一つである。

この上ない清冽さと、魅惑的な無重力感。The Sea And Cakeのさらなる洗練と成熟

『The Sea and Cake』(1994年)、『Nassau』(1995年)、『The Biz』(1995年)、『The Fawn』(1997年)、『Oui』(2000年)…。The Sea And Cakeは、豊穣な音楽性とワン・アンド・オンリーな個性を、ポスト・ロックの文脈で誇示してきた。

前作から3年のブランクを経てリリースされた6thアルバム『One Bedroom』(2003年)は、丸みを帯びたソフトロックの核はキープしつつ、エレクトロニカなエレメントも自然に取り込み、さらに洗練と成熟を極めた作品に。

モジュラー・シンセが奏でるループに触発されて生み出されたという、魅惑的なフレーズ。このギター・ワークが、アルバム全体にこの上ない清冽さと、魅惑的な無重力感を付与しており、アート・ロック+ジャズ・ロックといった風情の強かった初期アルバムと比べて、ポップ・アティチュードが格段に増した印象。

個人的ベスト・トラックのM-5『Shoulder Length』は、極端に音数を抑えたミニマルなギター・リフが耳に残る、本作の特質を最も端的に表しているナンバーだろう。

ラストを飾るM-10『Sound And Vision』は、’77年にデヴィッド・ボウイがリリースしたアルバム『Low』に収録されていたナンバーで、彼らにとって初のカバー曲。

ロウ <2017リマスター>
『Low』(デヴィッド・ボウイ)

サム・プレコップ、アーサー・プレウィットに加え、Aluminum Groupのフランク&ジョン・ネイヴィン兄弟をコーラスに迎えた、「オッサン4人」によるハーモニー。にもかかわらず、暑苦しくならず清涼感すら感じさせるのは、シカゴ音響派周辺のメンバーだからこそなし得るマジックか。

原曲が内包していたグラム・ロックのダウナー&ビザールなテイストを徹底的に血抜きし、浮遊感のあるテンダー・チューンに仕上げているのは、さすがの手つき。

The Sea And Cakeが奏でるサウンドからは、澄んだ風景が瞬く間にたちのぼってくる。「Sound And Vision」とは、そのものズバリの彼らのキャッチフレーズだ。

アルバム情報
プレイリスト
  1. 1. Four Corners
  2. 2. Left Side Clouded
  3. 3. Hotel Tell
  4. 4. Le Baron
  5. 5. Shoulder Length
  6. 6. One Bedroom
  7. 7. Interiors
  8. 8. Mr. F
  9. 9. Try Nothing
  10. 10. Sound & Vision
シー・アンド・ケイク アルバムレビュー