21世紀型の青春が凝固した、電子の音塊
青森出身というバックグランドが放つ自然の匂い。体温が感じられる心地いいボーカル、シンプルなバンドサウンド。卓越したメロディセンスは、宇宙的な広がりをもって世界にこだまする。それはまるで、かつて同じく東北の地からファンタジーを紡いだ宮沢賢治のように。
フリーダムな音楽を探究してきた彼等は、速すぎないテンポでゆっくりと進化し続けてきた。バンドとしての基本ラインを崩さず、しかし驚くべき浸透性であらゆるサウンドを吸収してきた。
その歩みは、砂原良徳をプロデューサーに迎えて2001年11月にリリースされたシングル『YUMEGIWA LAST BOY』でさらなる“進化”を果たす。 テクノミュージックに傾倒しつつ透明感と清潔感に溢れたクリアなサウンドは、ほんのちょっと先にある“未来”を見据えている。
そして、2002年に発売されたアルバム『HIGHVISION』。前出の砂原良徳に加え、プロデューサーにROVO、DUB SQUAD、ASLNなどでキーボーディストとして活躍した、益子樹を起用。
その完成度たるや…いやー参りました。前作で概にテクノ・トランス的手法を取り入れてはいたが、このアルバムではより洗練された純度の高いサウンドに昇華。
特に、アルバムの白眉ともいうべきM-8『Yumegiwa Last Boy』。四つ打ちのリズムにスペーシーなアナログシンセの旋律が重なる気持ち良さは、快感指数120%。
柔らかな音のひとつひとつは幸福感に満ち、ポジテヴィヴなリリックには浮遊感がある。コイツは傑作!SUPERCARは、「HIGHVISION以前」、「HIGHVISION以降」というパラダイムシフトによってハッキリと区別することができるだろう。
本来無機質である筈のテクノミュージックなのに、難解ではなくどこか“青さ”すら発散させるSUPERCARは、やはり音楽的純度の高いバンドだ。“涙が鉄の味がする”青春映画、『ピンポン』(2002年)の主題歌に『YUMEGIWA LAST BOY』が選ばれたのは必然であったのである。
耳を澄ませ。その電子の音塊には、21世紀型の青春が凝固している。
- アーティスト/SUPERCAR
- 発売年/2002年
- レーベル/KRE
- STARLINE
- WARNING BELL
- STORYWRITER
- AOHARU YOUTH
- OTOGI NATION
- STROBOLIGHTS
- I
- YUMEGIWA LAST BOY
- NIJIIRO DARKNESS
- SILENT YARITORI
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