かつての刑事・探偵ドラマ劇伴を想起させるフュージョン・サウンド
かつての刑事&探偵モノのドラマには、フュージョン系の渋い劇伴と主題歌があった。
松田優作主演の『探偵物語』(1979年〜1980年)ならSHOGUNの『BAD CITY』、沖雅也主演の『俺たちは天使だ!』(1979年)ならSHOGUNの『男達のメロディー』、草刈正雄主演の『プロハンター』(1981年)ならクリエーションの『ロンリーハート』…。
それを2020年に蘇らせてしまったのが、浜辺美波&岡田将生が主演したNHKドラマ『タリオ 復讐代行の2人』のオリジナルサウンドトラック。まるで大野雄二が作曲・アレンジをしたのかと思ってしまうくらいに、’70sライクなフュージョン・サウンドなんである。
『タリオ 復讐代行の2人』の音楽プロデューサーを務めたのは、『モテキ』(2011年)や『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』(2017年)など、大根仁ワークスで知られる岩崎太整。
業界屈指の理論派である彼は、この劇伴はシティポップ路線がジャストマッチであると確信。友人の一十三十一にコンタクトをとり、そのオファーを受諾した彼女がさらに「流線形」ことクニモンド瀧口にオファーしたことで、「流線形/一十三十一」の座組が完成した。
要は大名盤『TOKYO SNIPER』(2006年)のタッグが復活した訳で、ファンとしては嬉しい限り。
一十三十一にとっては初めての劇伴になった訳だが、実はその予行演習はすでに行われていたそうな。
本物の劇伴は初めてだったんですけど、自分のアルバムも映画のサントラを作るような感覚でやってたんですよね。『CITY DIVE』の後の2作(『Surfbank Social Club』『Snowbank Social Club』)はホイチョイ三部作をモチーフにしてたし、『THE MEMORY HOTEL』も実際に脚本を用意して、シーンに合わせて曲を作って。思えば、自分のアルバムで(劇伴制作の)練習をしていたというか。
(Real Sound記事より抜粋)
え、『Surfbank Social Club』(2013年)とか『Snowbank Social Club』(2014年)って、ホイチョイ・プロダクションズへのオマージュだったのか!知らんかったよ。
ま、それはいいとして、実際『Talio』を聴いてみると、M-2『タリオのテーマ』をはじめインストゥメンタル・ナンバーは大野雄二的(もしくは井上堯之的)なんだが、M-1『金曜日のヴィーナス feat. 堀込泰行』やM-20『悲しいくらいダイヤモンド』などのヴォーカル曲はニュー・ミュージック風と、完全に棲み分けがされていて、こづらにくい計算。
しかもジャケット・デザインには、大滝詠一の『A LONG VACATION』(1981年)を手がけた永井博を招聘するなど、アートワークにもこだわりまくり。
男臭いフュージョン・サウンドと、リゾート系シティ・ポップの同居。このアルバムを聴くたびに、今日も小生のハートは高く高く舞い上がるのである。
- アーティスト/流線形/一十三十一
- 発売年/2020年
- レーベル/ビクターエンタテインメント
- 金曜日のヴィーナス feat. 堀込泰行
- タリオのテーマ
- モンキービジネス
- 予告編
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