レトロだけど新しい、グラミー5冠に輝いたモンスター・アルバム
前作『Human After All』(2005年)から8年。ダフト・パンク結成20周年となる2013年にリリースされ、第56回グラミー賞では最優秀アルバム賞をはじめ5冠を獲得したモンスター・アルバムが、『Random Access Memories』(2013年)だ。
世界20か国以上でチャート1位を記録するなど、世界中でバカ売れ。ダフト・パンクの最高到達点というだけではなく、テン年代を代表するアルバムと言っていいだろう。
『Homework』(1997年)といい、『Discovery』(2001年)といい、これまでダフト・パンクはアナクロなダンス・ミュージックを鳴らしてきたユニットだった。いわゆるフレンチ・タッチの旗頭として、EDMシーンを牽引してきたのである。
しかし『Random Access Memories』は、これまでとは全く異なるアプローチを打ち出している。ディスコ、ソフトロック、ファンクチューン…いわゆる’70年代的な西海岸サウンドを、てらいもなく提示したのだ。
グラミー受賞エンジニアのミック・グゾウスキーによれば、できるだけナチュラルな音を録ることを心掛けたという。コンプレッションは控え目、ミックスであれこれいじることもナシ。
注目すべきなのは、素材の多くがアナログテープに録音してからPro Toolsに落としたという、アナログなミキシングだろう。レトロだけど新しいヴィンテージ・サウンドは、デジタル処理を行わないことで生まれたのだ。
アルバムのオープニングを飾るのは、M-1『Give Life Back To Music』。浮遊感のあるイントロから、カッティング・ギターがリズムを刻む展開がとっても’70年代ソウルなり。ちなみにギターを演奏しているのは、かのナイル・ロジャース!
続くM-2『The Game of Love』は、フェンダー・ローズのような響きのピアノが印象的。ちょっと引っ掛けたようなガシャガシャとしたギター、ドラムのブラシワークも気持ちい。
そしてM-3『Giorgio By Moroder』は、文字どおりジョルジオ・モロダーへのトリビュート・ナンバー。彼自身のモノローグに乗せて、スペーシーなレトロ・フューチャー・サウンドが鳴り響く。…と、13曲ぶん精緻に計算されたプロダクションを楽しめる。
M-6『Touch』はポール・ウィリアムズ(ダフト・パンクの二人は、映画『ファントム・オブ・パラダイス』以来彼のファンなんだそうな)、M-11『Fragments of Time』はトッド・エドワーズ、M-12『Doin’it Right』はパンダ・ベアと、ゲスト・ミュージシャンもゴキゲンな連中ばかりなり。
こんなアルバムが作れるのは、ダフト・パンクが泣く子も黙るビッグ・アーティストで、お金も時間もたっぷり製作にかけられたから。いつものことながら、『Random Access Memories』には彼らの本気汁がほとばしっている。
- アーティスト/Daft Punk
- 発売年/2013年
- レーベル/Daft Life
- Give Life Back to Music
- The Game of Love
- Giorgio by Moroder
- Within
- Lose Yourself to Dance
- Touch
- Get Lucky
- Beyond
- Motherboard
- Fragments of Time
- Doin’ It Right
- Contact
- Horizon
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