One Word Extinguisher/Prefuse73 プレフューズ73

スコット・ヘレンの並外れたエディット感覚が堪能できる、万華鏡的実験作

スコット・ヘレンの並外れたエディット感覚は、1stアルバム『Vocal Studies + Uprock Narratives』(2001年)から2年の雌伏の時を経て、今回の『One Word Extinguisher』(2003年)でよりソフィスティケートされ、よりワイドになった。

前作の代名詞ともいえるボーカルチョップは、本作ではM-2『The End Of Biters』や、M-5『The Color Of Tempo』で提示される程度。

『One Word Extinguisher』は、柔らかなメロディーラインとドリーミーなダル・サウンドが心地よくリスナーを刺激する、メロウなムードに包まれたアルバムである。

デジタルな音の断片を、切れ味鋭いナイフで切り刻むという、マッシヴな音響戦略ではなく、有機的な音素にエレクトロ・コーディングをかけるというような、知的かつ実験的なアプローチ。

万華鏡のごとく、変幻自在な音像が眼前に立ち現れる。アップ&ダウンのビートが、フィジカルに共振する、地肉の通った、エモーショナルな音像に仕上がっているのだ。

特にトミー・ゲレロとコラボしたM-19『Storm Returns」は、単なるカット&ペーストの世界観には収まりきらない、豊穣なアンビエンスが凝縮された一曲といえる。

スコット・ヘレンはもともとスケーターでもあったので、プロ・スケートボーダーとして西海岸のカリスマと称されたトミー・ゲレロとの共作は、非常に刺激的なものであったらしい。

ソウル・フード・タケリア
『Soul Food Taqueria』(トミー・ゲレロ)

別名義によるプロジェクト、Savath + Savalasのオーガニックな音響的世界観とも一線を画す、フォークトロニカにも近接した音像がそこにはある。

一聴しただけではとても理解できないほど、複雑怪奇なストラクチャーを有するトラック。しかし圧倒的なソフィスティケーションによって、スコット・ヘレンは驚くほどさらりと1時間弱を聴かせてしまう。

このアルバムを語るにあたって、残念ながら僕は「One Word Extinguisher(相手を黙らせる一言)」を持ち合わせてはいない。それは、ラップトップ・ミュージックの錬金術師スコット・ヘレンのみに与えられた特権である。

DATA
  • アーティスト/Prefuse 73
  • 発売年/2003年
  • レーベル/Warp
PLAY LIST
  1. The Wrong Side Of Reflection (Intro)
  2. The End Of Biters
  3. Plastic
  4. Uprock And Invigorate
  5. The Color Of Tempo
  6. Dave’s Bonus Beats
  7. Detchibe
  8. Altoid Addiction
  9. Busy Signal
  10. One Word Extinguisher
  11. 90% Of My Mind Is With You
  12. Huevos
  13. Female Demands
  14. Why I Love You
  15. Southerners
  16. Perverted Undertone
  17. Invigorate
  18. Choking You
  19. Storm Returns
  20. Trains On Top Of The Game
  21. Styles That Fade Away With A Collonade Repsrise

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