スコット・ヘレンの並外れたエディット感覚が堪能できる、万華鏡的実験作
スコット・ヘレンの並外れたエディット感覚は、1stアルバム『Vocal Studies + Uprock Narratives』(2001年)から2年の雌伏の時を経て、今回の『One Word Extinguisher』(2003年)でよりソフィスティケートされ、よりワイドになった。
前作の代名詞ともいえるボーカルチョップは、本作ではM-2『The End Of Biters』や、M-5『The Color Of Tempo』で提示される程度。
『One Word Extinguisher』は、柔らかなメロディーラインとドリーミーなダル・サウンドが心地よくリスナーを刺激する、メロウなムードに包まれたアルバムである。
デジタルな音の断片を、切れ味鋭いナイフで切り刻むという、マッシヴな音響戦略ではなく、有機的な音素にエレクトロ・コーディングをかけるというような、知的かつ実験的なアプローチ。
万華鏡のごとく、変幻自在な音像が眼前に立ち現れる。アップ&ダウンのビートが、フィジカルに共振する、地肉の通った、エモーショナルな音像に仕上がっているのだ。
特にトミー・ゲレロとコラボしたM-19『Storm Returns」は、単なるカット&ペーストの世界観には収まりきらない、豊穣なアンビエンスが凝縮された一曲といえる。
スコット・ヘレンはもともとスケーターでもあったので、プロ・スケートボーダーとして西海岸のカリスマと称されたトミー・ゲレロとの共作は、非常に刺激的なものであったらしい。
別名義によるプロジェクト、Savath + Savalasのオーガニックな音響的世界観とも一線を画す、フォークトロニカにも近接した音像がそこにはある。
一聴しただけではとても理解できないほど、複雑怪奇なストラクチャーを有するトラック。しかし圧倒的なソフィスティケーションによって、スコット・ヘレンは驚くほどさらりと1時間弱を聴かせてしまう。
このアルバムを語るにあたって、残念ながら僕は「One Word Extinguisher(相手を黙らせる一言)」を持ち合わせてはいない。それは、ラップトップ・ミュージックの錬金術師スコット・ヘレンのみに与えられた特権である。
- アーティスト/Prefuse 73
- 発売年/2003年
- レーベル/Warp
- The Wrong Side Of Reflection (Intro)
- The End Of Biters
- Plastic
- Uprock And Invigorate
- The Color Of Tempo
- Dave’s Bonus Beats
- Detchibe
- Altoid Addiction
- Busy Signal
- One Word Extinguisher
- 90% Of My Mind Is With You
- Huevos
- Female Demands
- Why I Love You
- Southerners
- Perverted Undertone
- Invigorate
- Choking You
- Storm Returns
- Trains On Top Of The Game
- Styles That Fade Away With A Collonade Repsrise
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