『A.I.』の考察/解説レビューをCINEMOREに寄稿しました

『A.I.』アンドロイドはブルーフェアリーの夢を見るか? ※注!ネタバレ含みます」という考察/解説レビューをCINEMOREに寄稿しました。

ある雨の日、高校生のスピルバーグ少年はサンノゼの映画館の列に並んでいた。すると、息子を発見した父親が自動車から突然飛び出してくる。手渡された手紙に書かれていたのは、「軍の身体検査に出頭せよ」。アメリカには選抜徴兵登録制度という制度があり、18歳から26歳未満の男子は登録しておく義務があるのだ。スピルバーグは、「自分の人生はあと1年以内に終わるかもしれない」とショックを受ける。息子の心中を慮り、「家に帰ろう」と優しく語りかける父親。だが、生粋の映画マニアである彼はこう答えたーーー「いや、僕は映画が観たい」。

そのまま映画館に駆け込むと、上映された作品にすっかり夢中になってしまう。強烈なブラック・ユーモア、俳優たちの素晴らしい演技。一風変わったSFコメディにのめり込み、徴兵の手紙のことなんかすっかり忘れていた。それだけの破壊力を、その映画は備えていた。作品のタイトルは、『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』(64)。スティーヴン・スピルバーグが初めてスタンリー・キューブリック作品に“ファースト・コンタクト”した瞬間だった。

キューブリックとの“セカンド・コンタクト”は、大学生の時に観た『2001年宇宙の旅』(68)。車でハリウッドのパンテージズ劇場まで向かい、長蛇の列だったため鑑賞するまでに3時間も待たされた。ようやく映画館に入場したときには、スピルバーグの期待値はパンパンに膨れ上がっている状態に。大きなスクリーンで目撃したSF叙事詩は、その期待を余裕で上回る。宇宙の深淵に触れるかのような、強烈な映像体験。友人たちは「ドラッグをしてから映画を見ると、より体験が高まる」と語っていたが、スピルバーグはドラッグ無しで誰よりもハイな状態になった。キューブリックの映像マジックが彼の精神に直接働きかけ、大きな作用を及ぼしたのだろう。

ぜひご一読ください!

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