草食系妄想男子がステキ女子に恋をしてフラれるまでを、The Smiths、Doves、Simon And Garfunkelといったゴキゲンミュージックと、PVを数多く手がけてきた新鋭マーク・ウェブによるカラフルな映像マジックで描く、ちょっと不思議なラブストーリー。
ネットを中心にこの映画の評価がエラく高かったんで、半額の日でもないのにわざわざ通常料金でDVDレンタルしてきました。
吸い込まれそうなブルー・アイと、自由奔放なキャラクターで、主人公のトム(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)をすっかり骨抜きにしてしまうサマーちゃんが、とにかく天下無双の可愛らしさ。
演じるズーイー・デシャネル嬢は、3/4がアイリッシュ、1/4がフランス人の血を引いている若手女優だが、She & HimなるロックデュオでCDデビューを果たしている歌手でもある。カ
ラオケ大会でPixiesをチャーミングに歌いあげ、トムがメロメロになるシーンがあるが、実績&素養を兼ね備えているのだ。
ガーリッシュなファッション・センスを誇るオシャレ番長にして、Belle&Sebastianの歌詞を卒業アルバムに引用してしまうほどのサブカル系女子。恋愛偏差値の低いトムくんならずとも、文科系男子なら誰もが恋心を抱いてしまうこと必至。IKEAのベッドで幸せそうに横たわる彼女の横顔なんぞ、オイ!マジ可愛いッス!やばいッス!
しかしこの映画、まかり間違ってもロマンチック・コメディーには非ず。運命の女性と信じ込んでいたサマーに、「私たちは運命じゃなかった」という地雷コメントを言わせてしまうほど、極めてドライな視座に貫かれた等身大の物語なのだ。
男女の恋愛の機微を非予定調和的に綴っていることから、『アニー・ホール』とも比肩されることが多いようだが、かといってその話術がウッディ・アレン的アイロニーと通じるかというと、そうでもなかったりする。
「音楽にダンス、スプリット・スクリーンにナレーション、カートゥーンの鳥まで登場する。ないのは皮肉だけだ」
とシナリオを手がけたスコット・ノイスタッターが語っている通り、これは極めてシンプルな恋愛映画なのだ。斜に構えた描写は一切なし。
コンプレを剥き出しにして、皮肉と嘲笑を映画内に散乱しまくるウッディ・アレン・タッチとは正反対のポイント・オブ・ビュー。意地らしいくらいに、サマーちゃんへの素直な恋慕が全編を覆っている。
男女の甘い蜜月をただスウィートに描くのではなく、蜜月が過ぎ去ったビター・テイストな「その後」も、時制をシャッフルさせながらキッチリ描いていく。
青春の残酷と、しかしその先にある新しい人生の船出を、『(500)日のサマー』はちょっと信じられないくらい巧みに素描している。
そう!草食系妄想男子が妄想から解き放たれ、一人前の漢としてリ・ボーンする瞬間にこそ、この映画の最大のマジックが潜んでいるのだ。
世の妄想系男子よ、この映画を観て現実の恋愛に正面からぶつかるべし。
- 原題/(500) Days of Summer
- 製作年/2009年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/96分
- 監督/マーク・ウェブ
- 製作/マーク・ウォーターズ、ジェエシカ・タッキンスキー、メイソン・ノヴィック、スティーヴン・J・ウルフ
- 脚本/スコット・ノイスタッター、マイケル・H・ウェバー
- 撮影/エリック・スティールバーグ
- プロダクションデザイン/ローラ・フォックス
- 衣装/ホープ・ハナフィン
- 編集/アラン・エドワード・ベル
- 音楽/マイケル・ダナ、ロブ・シモンセン
- ジョセフ・ゴードン=レヴィット
- ゾーイ・デシャネル
- ジェフリー・エアンド
- マシュー・グレイ・ガブラー
- クロエ・グレース・モレッツ
- クラーク・グレッグ
- レイチェル・ボストン
- ミンカ・ケリー
- パトリシア・ベルチャー
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