リチャード・ドナーの過剰なサービス精神と、メル・ギブソンのアクの強すぎる演技が共振した、ゆるふわ西部劇
19世紀の西部開拓期を舞台に、さすらいのギャンブラーの活躍を描いた人気TVシリーズ『マーヴェリック』(1994年)を、『リーサル・ウェポン』シリーズ以来の盟友であるリチャード・ドナーとメル・ギブソンのコンビで映画化。
とにかく全編おおらかなユーモアで覆われた、ゆるふわ西部劇である。『リーサル・ウェポン』でメル・ギブソンの相棒を演じていたダニー・グローバーが友情出演していたりして、いかにも気心の知れたスタッフ・キャストによる和気あいあいとした映画製作風景が目に浮かぶ。
名作曲家ランディ・ニューマンが『大いなる西部』(1958年)、『夕陽のガンマン』(1965年)といった西部劇の主題曲を音楽に取り入れていたり、『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(1990年)で誇り高きインディアンを演じていたグレアム・グリーンが、すっかり文明化してしまった先住民をユーモアたっぷりに演じていたり、西部劇ファンへの目配せがスゴイ。
おまけに、TVシリーズ『マーヴェリック』の主演を務めていたジェームズ・ガーナー自身が、保安官役で出演していたり(ラストで意外な真相が明らかにされる)、嬉しい趣向を凝らしまくっている。
リチャード・ドナーはいい意味でも悪い意味でも、己の作家的資質を全面に押し出す演出家ではなく、ターゲティングされた客層に対して最も効果的なプレゼンスを組み立てる、オーディエンス・オリエンテッドな職業作家だ。
しかしリチャード・ドナーの過剰なサービス精神がメル・ギブソンのアクの強すぎる演技と共振してしまうと、映画がキャラクター主導になってしまって完全にメルのワンマン・ショーと化してしまい、別に彼のファンでもなんでもない僕には胃がもたれてしまいそうである。
そもそもメル・ギブソン演じるマーヴェリックが、大胆不敵な早撃ちガンマンなのか、大芝居で皆をケムに巻く希代の詐欺師なのか、さっぱりキャラクターがつかめない。結果、『スティング』風の騙し騙されの頭脳戦なのか、ひたすら体力勝負の正統西部劇なのかが判然とせず、いまひとつ僕にはノリきれなかった。
とまあ色々文句を述べてきたましたが、女詐欺師を演じるジョディ・フォスターのコメディエンヌぶりがエロくて可愛いので許す!
- 原題/Maverick
- 製作年/1994年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/127分
- 監督/リチャード・ドナー
- 製作/ブルース・デイヴィ、リチャード・ドナー
- 脚本/ウィリアム・ゴールドマン
- 撮影/ヴィルモス・ジグモンド
- 美術/トム・サンダース
- 音楽/ランディ・ニューマン
- 衣装/エイプリル・フェリー
- 特撮/スティーヴ・プライス
- メル・ギブソン
- ジョディ・フォスター
- ジェームズ・ガーナー
- グレアム・グリーン
- アルフレッド・モリーナ
- ジェームズ・コバーン
- ダブ・テイラー
- ジェフリー・ルイス
- ダン・ヘダヤ
- ダニー・グローバー
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