鬼畜上等、鬼畜最高。いたいけな少年少女たちの、血なまぐさいウォーゲーム
楽しい修学旅行のつもりが絶海の無人島に連れていかれ、武器をもらって「さあ、殺しあいなさい」となるんだから、実にカワイソウな中学生たちである。
ボウガンやらマシンガンやらナイフやら、挙げ句の果てにはなぜかハリセンまで(チャンバラトリオのつもりか!?)多種多様の武器が登場し、繰り広げられるのは目を覆うばかりの大殺戮。老いてなお元気な深作欣二は、 いたいけな少年少女のウォーゲームをノンブレーキで描いてしまった。
もともと深作欣二は、中学生たちの生々しい感情を描いた映画を撮りたいと思っていた。その動機は太平洋戦争にまで遡る。当時中学生だった深作欣二少年は、アメリカ軍の砲撃によってバラバラとなった学友の遺体をかき集めるという、凄まじい体験をしているのだ。
深作少年の動揺ぶりは想像に難くない。やがてそれは、大人への激しい怒りへと転化していった。年月が過ぎ、息子の深作健太から高見広春の小説『バトル・ロワイアル』を紹介してもらった彼は、中学生当時の感情を思い出す。
70歳近い高齢となっていた深作欣二は、 満を辞して「中学生たちの生々しい感情を描いた映画」を撮るチャンスを得たのだ。
不謹慎であることを承知でいえば、この映画は「純白」だとか「無垢」の象徴である少年少女たちが、血なまぐさいバトルに飲み込まれていくのを、楽しむべき映画である。彼等の死にっぷりを、楽しむべき映画である。
鬼畜上等、鬼畜最高。我々は、フィクションという虚構の世界を傍観する観客にしか過ぎない。「友情」だの「正義」などという言葉は、この映画を倫理的に防御するためのバリケード。だが、映画としての強度は明らかに脆弱。ビジュアルが先行しすぎて、作品を牽引すべき“物語”が見えてこないのだ。
所々でキャラクターの心象をキャプションでみせていく『エヴァンゲリオン』的手法も、何だかすごく時代遅れで陳腐。アップ・トゥー・デートのセンスが欠落している深作監督が、無理矢理にイマ風演出をしているみたいで、観ていて気恥ずかしくなってしまう。
出演陣にも疑問あり。藤原竜也と前田亜依 (このコは清楚なのにリンとした強さがありますね)のコンビは悪く無いんだが、中学生には到底みえない山本太郎や、サイコ演技が空回りしている安藤政信は絶対にキャスティングミス。
「教師キタノ」を演じたビートたけしも、予想通りの人物造型で驚きがない。『バトルロワイヤル』はサプライズのない映画なのだ。
この作品がR-15に指定されて、世間的な騒ぎになったのは記憶に新しい。映画そのものの評価は別にしても、中学生を描いた映画を中学生に鑑賞させないというのは、保護意識過剰な親心か。いつになったら日本は、こういう程度の低い議論から解放されるんかいな。
衝撃度でいえば、漫画の『漂流教室』の方がデカイと思うぞ。あっちは何せ小学生が殺しあうんだからね。
- 製作年/2000年
- 製作国/日本
- 上映時間/114分
- 監督/深作欣二
- 製作総指揮/高野育郎
- プロデューサー/片岡公生、小林千恵、深作健太、鍋島壽夫
- 原作/高見広春
- 脚本/深作健太
- 撮影/柳島克己
- 照明/小野晃
- 美術/部谷京子
- 音楽/天野正道
- 藤原竜也
- 前田亜季
- 山本太郎
- 栗山千明
- 柴咲コウ
- 安藤政信
- 塚本高史
- 高岡蒼佑
- 小谷幸弘
- 石川絵里
- 神谷涼
- ビートたけし
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