気取ったスノビズムとは無縁。ひたすら楽天的なサーカス・ムービー
『8 1/2』に関する1ダース
- 『8 1/2』(1963年)は、フェデリコ・フェリーニの代表作であると同時に、映画史にその名を刻む古典として認知されている作品である。1963年のアカデミー外国語映画賞、アカデミー衣裳デザイン賞を受賞。
- フェリーニは、この映画が自叙伝的作品として捉えられることを、極度に嫌ったと言う。しかし、マルチェロ・マストロヤンニ演じる映画監督グイドが、フェリーニ自身を投影したキャラクターであることは間違いない。グイドの年齢が43歳という設定も、映画公開時のフェリーニの実年齢と一致している。
- 『8 1/2』のタイトルは、共同監督作品を 1/2としてカウントした場合、この映画がフェリーニの 8 1/2本目だから、というのが定説になっているが、実際には長篇、短篇、共同監督作品をあわせると10本目に当たる。
- 交錯する現実と虚構、断片化された人生。この映画にはストーリーは存在しない。あるのは、溢れんばかりの豊穣なイマージュ。なかんずく、冒頭5分間の白昼夢的風景は、観客の心を捉えて離さない。
- ニーノ・ロータの音楽は、とにかくひたすら狂騒的で神経症的。フェリーニ×ロータのコンビ作のなかでも、最高の仕事の一つだろう。この映画のサントラを、デヴィッド・シルヴィアンも愛聴していたという逸話もアリ。
- 僕は中学生の時に初めてこの映画を観て、「オトナであること」って、ストレスの溜まることなんだなーと感じた記憶がある。充足されない幼児願望が、露骨に表出していることにも、それは顕著と思ったものだ。
- 日本を代表する美術監督・木村威夫は、『8 1/2』の映画美術の凄さに圧倒され、脳天を打ち砕かれる思いがしたという。
- 久保田慎吾、上野耕路、泉水敏郎らが、同名のニュー・ウェイヴ・バンドを結成していたが、どれだけフェリーニの映画にインスパイアされていたかどうかは不明。
- 乞食女サラギーナが、どうしても春川ますみに見えて仕方がない。
- これは天才芸術家の赤裸裸な自己告白か、それとも単なるマスターベーション行為か。僕はどっちでも構わない。結局のところ、意味するところは同じなのだから。
- シネフィルで知られるサックス奏者の菊地成孔は、傑作アルバム『記憶喪失学』(2011年)のM-11「映画 8 1/2 ~ それから」で、フェリーニへのオマージュを捧げている。
- 『8 1/2』は観念的な映画であるにも関わらず、気取ったスノビズムとは無縁。あくまで楽天的なサーカス・ムービーだ。ラストでマルチェロ・マストロヤンニも語りかけているではないか。「人生はお祭りだ、一緒に過ごそう」と…。
DATA
- 原題/Otto e mezzo
- 制作年/1963年
- 制作国/イタリア、フランス
- 上映時間/132分
STAFF
- 監督/フェデリコ・フェリーニ
- 製作/アンジェロ・リッツォーリ
- 原案/フェデリコ・フェリーニ、エンニオ・フライアーノ
- 脚本/フェデリコ・フェリーニ、トゥリオ・ピネリ、エンニオ・フライアーノ、ブルネロ・ロンディ
- 撮影/ジャンニ・ディ・ヴェナンツォ
- 衣装/ピエロ・ゲラルディ
- 音楽/ニーノ・ロータ
CAST
- マルチェロ・マストロヤンニ
- クラウディア・カルディナーレ
- アヌーク・エーメ
- サンドラ・ミーロ
- ロッセーラ・ファルク
- バーバラ・スティール
- グイド・アルベルティ
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