作劇のアラが目立ちまくった、全く血が流れない大甘時代劇
何でも『BALLAD 名もなき恋のうた』(2009年)は、山崎貴監督が『ラスト・サムライ』(2003年)のロケ現場を見学したときに、戦国時代を舞台にした本格時代劇への渇望が生まれたことで、始動したらしい。
しかし、まさかその出典を『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』(2002年)に求めるとは思わなんだ。『クレしん』的ドタバタ・コメディーを最新のVFXで実写で再現しようなんぞ、『宇宙戦艦ヤマト』(1974年)を実写化する以上に無謀な賭けではないか!
実際、『クレしん』だからオッケー!みたいな感じで(とりあえず)成立していた作劇上の無茶苦茶さは、実写化することによってアラが目立ってしまっている。
井尻又兵衛(草なぎ剛)と廉姫(新垣結衣)との悲恋も、甘ったるくてチープなラブストーリーにレベルダウン。だが最もヒドいのは、時代劇としての機能を全く果たしていない合戦シーンである!
おもいっきり、『ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔』(2002年)を参考にしたであろう城攻めのシーンは、撮り方自体は悪くないと思うんだが、守る春日城と攻める大倉軍との距離が近すぎて、スケール感がなさすぎ!
長槍同士で叩き合うシーンも、この合戦方法は史実に極めて忠実らしいが、チープな時代考証の上に成立しているもんだから、単なるお遊戯ごっこにしか見えない(しかもワンカットで撮ってるもんだから、チープ感がさらにアップしてしまっている!)。
香川京子や油井昌由樹など、明らかに黒澤明に目配せしたであろうキャスティングも、テレビ的と言っていい箱庭的世界観のなかで全く存在感を発揮できておらず。
インタビューなどで拝見するに、山崎貴監督は実直で真面目でグッド・ルッキングな、ナイスガイのようである。しかし極めて個人的見解を述べさせてもらうなら、いわゆる“いい人”は映画監督という職業には向かないんではないか。山崎貴監督のフィルモグラフィーに通底する「甘さ」は、どうしても彼の善人すぎる資質によるものに思えるのだ。
っていう訳で、人を人とも思わないヒトデナシ監督にリ・ボーンしていただき、『プライベート・ライアン』(1998年)ばりの阿鼻叫喚ムービーを作って頂きたいと思う所存。いやホント、時代劇で全く血が流れないってあり得ませんから!
- 製作年/2009年
- 製作国/日本
- 上映時間/132分
- 監督/山崎貴
- プロデューサー/安藤親広、松井俊之
- エグゼクティブプロデューサー/阿部秀司、梅澤道彦
- 原案/原恵一
- 脚本/山崎貴,水島努
- 撮影/柴崎幸三
- 美術/上條安里
- 衣裳/福田明
- 編集/宮島竜治
- 音楽/佐藤直紀
- 衣裳/黒澤和子
- 録音/鶴巻仁
- 草なぎ剛
- 新垣結衣
- 大沢たかお
- 夏川結衣
- 筒井道隆
- 武井証
- 吹越満
- 斉藤由貴
- 香川京子
- 小澤征悦
- 中村敦夫
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