殺人と横領の濡れ衣を着せられたネゴシエーター(交渉人)のサミュエル・L・ジャクソンが、身の潔白を晴らすべく連邦政府ビルの内務局に立て篭もり、自ら指名したネゴシエーターのケビン・スペイシーと協力して、黒幕を追いつめて行くサスペンス・アクション映画。
…なのだが、サミュエル・L・ジャクソンの弁舌巧みな交渉術によって、彼を信じる仲間を警察内に確保し、やがて事件の真相を明らかにしていくみたいなプロットのほうが、たぶん作劇的には活きたと思う。
見渡すかぎり敵だらけという四面楚歌状態から抜け出すために、サミュエル・L・ジャクソンが人質を殺すと脅してケビン・スペイシーを交渉相手に指名した結果、彼に対して何の偏見もないスペイシーは、極めてフラットな態度でサミュエルの要求に対応する。つまりここには、術謀渦巻く壮絶な駆け引きは存在しない。
せいぜい、ケビン・スペイシーが偽の内通者を連れてきたり、サミュエルからの電話がかかってくるたびにガチャンと切ってイライラさせるぐらいで、映画を協力に吸引するほどのサスペンスは生成されないのだ。
F・ゲイリー・グレイによる演出も、カッティングやストーリーテリングの緩急に冴えが見られず。ベーシックなアイディアは秀逸なだけに、非常に惜しい作品ではある。
ちなみにこの作品、’80年代にセントルイスで起きた実際の年金汚職事件を元ネタにしているとか。アメリカっていつまでたっても汚職まみれなのね。
- 原題/The Negotiator
- 製作年/1998年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/139分
- 監督/F・ゲイリー・グレイ
- 製作/デヴィッド・ホッバーマン、アーノン・ミルチャン
- 脚本/ジェームズ・デモナコ、ケヴィン・フォックス
- 撮影/ケヴィン・フォックス、ラッセル・カーペンター
- 音楽/グレーム・レベール
- 編集/クリスチャン・ワグナー
- サミュエル・L・ジャクソン
- ケビン・スペイシー
- デヴィッド・モース
- ロン・リフキン
- ジョン・スペンサー
- J・T・ウォルシュ
- ポール・ギルフォイル
- シオバン・ファロン
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