インデペンデンス・デイ/ローランド・エメリッヒ

インデペンデンス・デイ:リサージェンス [Blu-ray]

マッチョイズムに溢れた戦意高揚的SF

とにかく

デカイ。

思わずフォントもデカくなってしまうほど、デカいのである。何がデカいって、宇宙船がデカいのである。

そのサイズたるや、何と月の1/3!そんな巨大宇宙船が、わらわらと地球の主要都市に来襲してしまうのだから、オソロシイ。デカけりゃいいというのは、何だか巨根信奉主義みたいで僕は嫌ですね(こういう事を言うと僕がまるで小さいみたいだが)。

とにかくこの『インデペンデンス・デイ』(1996年)、ナチス政権時のプロパガンダ映画かと思うくらい、戦意高揚的な精神に貫かれている。地球侵略を目論むエイリアンは完全悪であり、われわれ人類は絶対的正義という、無邪気な善悪二元論がこの映画の基本原理。

平和的共生を提案する大統領に対し、エイリアンは殺された博士の身体を介して「何を言う!お前ら皆殺しだ!!ギャハハハ」と鬼畜発言をするシーンが、地球側の「絶対的正義」を保証する。

相対主義的思想が世界中に蔓延している現在、これだけ明白かつ直裁的に“悪”を提示しない限り、善悪二元論は定義できないのだ。

「七月四日はもはやアメリカ独立記念日だけではなく、地球が真に平和を取り戻す新しい独立記念日なのだ!」

大統領は最後の決戦を前にして、戦意を高揚させるスピーチをぶつ。まさに、「力=モラル」をスローガンにしてきた超大国を直裁に示しているシーン。

共産勢力を力でねじふせてきたアメリカは、グローバリズムという名のもとに米国主義を世界に植え付け、世界の覇者としての地位を確固たるものにしようとしている。

2001年の同時多発テロ直後、実に国民の90%が報復攻撃を支持したことでも明白なように、アメリカの威信は常にアブソリュート・パワーによって取り戻されるのだ。

「昔オレは宇宙人に拉致されたんだ」等とうそぶいてたオッサンが、カミカゼ・アタックで敵の巨大宇宙船を破壊するシークエンスにおいて、国家主義的マッチョイズムは頂点に達する。

確かに、大統領までが戦闘機に乗り込んで敵の巨大宇宙船に最後の大決戦を仕掛けるという荒唐無稽なストーリーは、B級映画の面白さに満ちている。だがそのエンターテインメントを保証する受け皿は、もはやこのような形でのマッチョイズムでしか表現できない。

『インデペンデンス・デイ』は、娯楽映画というフォーマットで、はからずもアメリカの病理を白日の下にさらしてしまっている。

DATA
  • 原題/Independence Day
  • 製作年/1996年
  • 製作国/アメリカ
  • 上映時間/145分
STAFF
  • 監督/ローランド・エメリッヒ
  • 脚本/ローランド・エメリッヒ、ディーン・デブリン
  • 製作/ディーン・デブリン
  • 製作総指揮/ローランド・エメリッヒ、ウテ・エメリッヒ、ウィリアム・フェイ
  • 撮影/カール・ウォルター・リンデンローブ
  • 音楽/デヴィッド・アーノルド
  • 編集/デヴィッド・ブレナー
  • 衣装/ジョゼフ・ポロ
CAST
  • ウィル・スミス
  • ビル・プルマン
  • ジェフ・ゴールドブラム
  • メアリー・マクドネル
  • ジャド・ハーシュ
  • ロバート・ロジア
  • ランディ・クエイド
  • マーガレット・コリン
  • ブレント・スピナー
  • マーガレット・コリン
  • ブレント・スピナー

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