12人の優しい日本人/中原俊

12人の優しい日本人【HDリマスター版】 [DVD]

『12人の怒れる男』への尊敬と愛情が込められた、偉大なるパティーシュ

もともとはシドニー・ルメットが監督したサスペンス映画の傑作『十二人の怒れる男』(1954年)に三谷幸喜がインスパイアを受け、東京サンシャインボーイズのために書き下ろした戯曲が、『12人の優しい日本人』。2005年にはキャストも新たに再演された、三谷幸喜の代表作である。

【1990年 初演】
陪審員1号 小原雅人
陪審員2号 相島一之
陪審員3号 阿南健治
陪審員4号 小林隆
陪審員5号 かんみほこ
陪審員6号 一橋壮太朗
陪審員7号 梶原善
陪審員8号 斉藤清子
陪審員9号 西村雅彦
陪審員10号 宮地雅子
陪審員11号 野中功
陪審員12号 伊藤俊人

【2005年 パルコ公演】
陪審員1号 浅野和之
陪審員2号 生瀬勝久
陪審員3号 伊藤正之
陪審員4号 筒井道隆
陪審員5号 石田ゆり子
陪審員6号 堀部圭亮
陪審員7号 温水洋一
陪審員8号 鈴木砂羽
陪審員9号 小日向文世
陪審員10号 堀内敬子
陪審員11号 江口洋介
陪審員12号 山寺宏一

尊敬と愛情をこめたパティーシュとしてつくられた本作は舞台で好評を博し、ついには映画版『12人の優しい日本人』(1991年)として公開されてしまった。パロディ作品は数あれど、オリジナルを比肩するほどの傑作になってしまった例というのは、あまり記憶にない。

シナリオの見事さという点では、’90s邦画のなかでも白眉。『十二人の怒れる男』は、12人の陪審員を主人公に、「正義とは何ぞや」という真面目なテーマに取り組んだ社会派の作品だった。

『12人の優しい日本人』はこのプロットを下敷きにしながらも、徹頭徹尾コメディー風味。「もしも日本に陪審員制度があったら」という仮想ミステリー・コメディーなんである。

三谷幸喜の脚本も見事だが、その空気感を描き切った中原俊もグッジョブ。何よりもミステリーとして立派に成立している。後年、和製『刑事コロンボ』と言える『古畑任三郎』を執筆したほどのミステリー狂・三谷幸喜の本領発揮。二転三転するツイスト展開は、本家『12人の怒れる男』以上だ。

『古畑任三郎』

出演陣も、舞台系の役者を中心にツボをこころえたキャスティング。

【映画版】
陪審員1号 塩見三省
陪審員2号 相島一之
陪審員3号 上田耕一
陪審員4号 二瓶鮫一
陪審員5号 中村まり子
陪審員6号 大河内浩
陪審員7号 梶原善
陪審員8号 山下容莉枝
陪審員9号 村松克己
陪審員10号 林美智子
陪審員11号 豊川悦司
陪審員12号 加藤善博

どの俳優も味わいある演技を披露しているが、特に印象に残ったのが上田耕一。普段はヤクザの役など、凄みをきかした演技が頭に浮かぶが、今までのイメージとは180度違う気弱な役を飄々と演じている。ブレーク前の豊川悦司も重要な役で出演。

しっかりしたコメディーはしっかりした役者が出ないと成立しないことを、改めて認識させられた。

DATA
  • 製作年/1991年
  • 製作国/日本
  • 上映時間/116分
STAFF
  • 監督/中原俊
  • 製作/岡田裕
  • プロデューサー/笹岡幸三郎、垂水保貴
  • 脚本/三谷幸喜と東京サンシャインボーイズ
  • 企画/成田尚哉、じんのひろあき
  • 撮影/高間賢治
  • 美術/稲垣尚夫
  • 編集/冨田功、冨田伸子
  • 録音/志満順一
CAST
  • 塩見三省
  • 相島一之
  • 上田耕一
  • 二瓶鮫一
  • 中村まり子
  • 大河内浩
  • 梶原善
  • 山下容莉枝
  • 村松克巳
  • 林美智子
  • 豊川悦司
  • 加藤善博
  • 久保晶
  • 近藤芳正

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