ポール・ニューマンの飄々とした魅力が弾ける、ハードボイルド映画
僕は酒も煙草も女(?)も苦手なタチなので、男のダンディズムが洪水のように溢れている、タフガイな世界観にはどうも馴染めず。
しかし、なぜだかハードボイルドの代名詞とも言うべき、ロス・マクドナルド原作の映画『動く標的』(1966年)を鑑賞してしまった。
主演はポール・ニューマン、脚本はニューマンも出演した『明日に向って撃て!』(1969年)でアカデミー脚本賞を受賞しているウィリアム・ゴールドマン、監督は『刑事コロンボ』の演出なども手がけたジャック・スマイト。
この鉄壁トライアングルによって、世界中にファンの多い私立探偵リュウ・アーチャーものを作り上げた(この映画ではリュウ・ハーパーと改名されている)。
行方不明になった大富豪サンプスンの捜索を頼まれた私立探偵のリュウ・ハーパーが、やがて事件の背後にシンジケートの存在を知る…というストーリー。
話がえらい錯綜しているうえに、テンポはF1レースのように速く、テンポが速い割には「関係が冷め切っている奥さんと、ヨリを戻そうとするシーン」が前ぶれなく挿入されたりするので、ついていくのに骨が折れる。
起伏に富んではいるが山場のスケールが小さすぎて、ドラマ全体としてのカタルシスは感じられず。しかしこれはハードボイルド作品の典型的フォーマットであるからして、これはこれでいいのである。
リュウ・ハーパーは、愚痴はこぼすわ、妻には三行半を突きつけられるわ、敵にはボコボコに殴られるわで、「タフじゃなければ生きていけない。しかし、タフなだけでは生きている資格がない」な~んてのたまうフィリップ・マーロウとはえらい違い。
しかし、ポール・ニューマンの飄々とした魅力で人間味あふれるキャラクターに。軽口をたたきながら、颯爽と事件を解決していく姿は確かにかっこいい。
共演者も豪華絢爛。『サイコ』(1960年)のジャネット・リー、イヤな女をやらせたら天下一品のローレン・バコール、白いビキニを着てプールサイドでクネクネ踊るパメラ・ティフィン、往年の二枚目スター・ロバート・ワグナー、『エデンの東』(1955年)に出ていたのは遠い昔、今はヤク中役をやらされてしまうジュリー・ハリスなどなど。
それにしても一匹狼の私立探偵って、古今東西の例をもれずモテるものなんですね。僕も将来は、港々に女がいるような立派なタフガイになりたいと思います。
- 原題/The Moving Target
- 製作年/1966年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/121分
- 監督/ジャック・スマイト
- 製作/ジェリー・ガーシュイン、エリオット・カストナー
- 原作/ロス・マクドナルド
- 脚本/ウィリアム・ゴールドマン
- 撮影/コンラッド・ホール
- 音楽/ジョニー・マンデル
- ポール・ニューマン
- ローレン・バコール
- パメラ・ティフィン
- ロバート・ワグナー
- ジャネット・リー
- シェリー・ウィンタース
- ジュリー・ハリス
- アーサー・ヒル
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