ベスト・キッド/ハラルド・ズワルト

ベスト・キッド [Blu-ray]

ウィル・スミスが息子のためにつくった世紀の親バカ映画

ケータイの待ち受けを子供の写真にするとか、運動会で奮闘する子供をビデオカメラで撮るとか、親バカの在り方もいろいろありましょうが、海外セレブにもなるとスケールが違います。

8000万ドルの収入を得て、2008年の「最も稼いだ俳優番付」1位に輝いたウィル・スミスは、何と自分の息子ジェイデン・スミスを主役にした、ハリウッド映画を製作してしまったのだ。

2006年の映画『幸せのちから』で親子競演を果たしているものの、マセガキのジェイデン・スミスはそれだけでは満足できなかったのだろう。

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「パパー、ボクかっこいい映画の主役やりたいよー」とねだられ、「ハッハッハ。しょうがないなあ。じゃあ『ベスト・キッド』のリメイクでも作ろうか。師匠役はジャッキー・チェンで!」みたいな会話があったものと推察する。かくして、世紀の親バカ映画は始動した。

オリジナルの『ベスト・キッド』(1984年)では、ラルフ・マッチオがイケてないモヤシッ子の主人公ダニエルを演じていたが、「ボク、イジメにあったことないから、いじめられっ子の気持ちなんか分かんない!」と豪語するジェイデン君(その時点でキャスティング・ミスじゃないか?)は、持ち前の運動神経と敏捷性を駆使し、中国武術の使い手にも果敢に闘いを挑むモテキャラにアップデート。

主題歌『Never Say Never』もジャスティン・ビーバーとデュエットしちゃうし、まだ12歳のクソガキにもかかわらずヒロインのハン・ウェンウェン(微妙に顔立ちが残念)と熱烈キスしちゃう。

ラスト・クレジットではウィル・スミスと談笑するスナップショットが盛りだくさんだし、ジェイデンくんのわがままぶり&ウィル・スミスの親バカぶりが縦横無尽にスパーク。これで映画がつまらなければ、心置きなく文句だけ言って済ませられるんであるが、意外にも内容がよく出来ているのがこずらにくい。

ジャッキー・チェンお抱えのスタント・チームがこの作品の殺陣を担当しているだけあって、オリジナルをはるかに凌駕するアクション・シーンは、血沸き肉躍る完成度。

オジサン的には、思わず、「年端もいかないコドモたちが、こんなに激しいバトルを繰り広げちゃっていいのかしら」といらぬ心配をしてしまうほど。いや、マジでこれ大丈夫だったのか!?

シナリオも悪くない。「単なるワックスがけが、実は空手の基本動作の反復練習になっていた」というオリジナルの設定をまんまパクらず、「ジャケットをハンガーにかける」という設定に置き換えているんだが、これが「服を脱ぎっぱなしだったジェイデン君が、きちんと洋服にハンガーにかけるようになる」という、お母さん目線からの精神的成長としてきちんと描かれていて、感心しきり。

監督のハラルド・ズワルトも、ジェイデン&ジャッキーの特訓シーンを鳥瞰で撮るなど、『ロッキー』シリーズを彷彿とさせる王道な演出で、139分の長尺を飽きさせない。ウィル・スミス製作、ジェイデン・スミス主演の『ベスト・キッド』は、おそらく世界一贅沢なホーム・ムービーである。

しかしどれだけ公私混同しようとも、金と才能さえ注ぎ込めば、一級のエンターテインメント作品に仕上がってしまうのだ。

ある意味、ハリウッドの底力を見せつけられたです。

DATA
  • 原題/The Karate Kid
  • 製作年/2010年
  • 製作国/アメリカ
  • 上映時間/139分
STAFF
  • 監督/ハラルド・ズワルト
  • 製作総指揮/ダニー・ウルフ、スーザン・イーキンス、ハン・サンピン
  • 製作/ジェリー・ワイントローブ、ウィル・スミス、ジェイダ・ピンケット=スミス、ジェームズ・ラシター、ケン・ストヴィッツ
  • 脚本/クリストファー・マーフィー
  • 音楽/ジェームズ・ホーナー
  • 撮影/ロジャー・プラット
  • 編集/ジョエル・ネグロン
CAST
  • ジェイデン・スミス
  • ジャッキー・チェン
  • タラジ・P・ヘンソン
  • ハン・ウェンウェン
  • ワン・ツェンウェイ
  • ユー・ロングァン

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