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抱きたいカンケイ/アイヴァン・ライトマン

『抱きたいカンケイ』──“条件なしの愛”を描く知的ロマンティック・コメディ

『抱きたいカンケイ』(原題:No Strings Attached/2011年)は、医師エマ(ナタリー・ポートマン)とテレビ助監督アダム(アシュトン・カッチャー)が、「本気になったら関係終了」という約束のもと肉体関係を続ける物語。互いの感情を制御しようとする中で、友情と愛情の境界が曖昧になり、周囲の人々との関係を通じて二人の絆が試されていく。

ナタリー・ポートマン、清純と挑発の狭間で

マイク・ニコルズ監督の『クローサー』(2004年)でストリッパー役に挑戦しながら、惜しくもヌードシーンがカットされたナタリー・ポートマン。

さらにミロス・フォアマンの『宮廷画家ゴヤは見た』(2006年)でもバストトップを封印。彼女の“出し惜しみ戦略”には、もはや伝統芸のような潔癖さすら漂う。

デビュー作『レオン』(1994年)以来、母親がエージェントとして性描写を徹底的に管理しているというのは有名な話。だがその清廉さこそ、ナタリー・ポートマンというブランドの中核をなしてきた。彼女は決して肉体を露わにすることで観客を魅了しない。あくまで「知性」「意志」「意図された可愛げ」で観る者を翻弄するのである。

そんなポートマンが一転、自らプロデュースも兼ねた『抱きたいカンケイ』(2011年)では、寝る間も惜しんで男友達(アシュトン・カッチャー)とセックス三昧の日々を送る医師エマを熱演。とはいえ、ここでも“肉体派”というより“頭脳派”の色気で勝負する。

彼女の演技には、欲望の直接的表現ではなく、「理性が崩れていく過程」を見せる巧妙な演出意識がある。ベッドシーンにおいてすら、視線や呼吸のリズムが繊細に計算されており、“脱がないエロス”を極限まで洗練させているのだ。

結果として、チャーミングで、可笑しく、そしてどこか哀しいヒロイン像が立ち上がる。

愛と性のルールを破るロマンティック・コメディ

「本気になったら関係終了」という“セフレ契約”を交わした二人が、やがて真の愛情に踏み出してしまう。これは恋愛映画というより、愛と身体の境界を描く哲学的実験だ。

周囲の登場人物たちは、すべてその“契約の脆さ”を映す鏡として配置されている。アシュトン・カッチャー演じるアダムは、愛に不器用で、性的には積極的だが情緒的には幼い――まるで現代的“草食男子”の象徴。彼が「3Pに誘われて断る」というシーンは、性愛を快楽ではなく「人間的距離の縮め方」として捉える本作の核心を物語っている。

『アニマル・ハウス』(1978年)や『ゴーストバスターズ』(1984年)で知られるアイバン・ライトマンのコメディ演出は、今回も冴えわたる。彼は“軽さ”を決して単なる娯楽要素として扱わない。

軽さの中にこそ、現代社会の人間関係の希薄さ、恋愛のシステム化への風刺を忍ばせているのだ。 ケビン・クライン演じる奔放な父親、レイク・ベルの神経質なTVプロデューサーといった脇役たちが、恋愛の“条件”や“役割”を可笑しく暴く。

結果として、物語全体が「恋愛とは何か」を問うシステム批評としても読める。

“条件なし”という自由のパラドックス

原題の “No Strings Attached” とは、「糸が付いていない」、つまり“条件なしの自由”。だが、自由であることほど人間を不安にするものはない。ナタリー・ポートマン演じるエマが、自由を求めながらも愛に縛られていく過程は、まさに現代人のアイロニーそのものだ。

本作は、“脱がない女優”が見せた、もっとも大胆な自己解体の試みである。身体を見せずに、感情を裸にする。ナタリー・ポートマンは、またしても知的に観客を挑発したのだ。

DATA
  • 原題/No Strings Attached
  • 製作年/2011年
  • 製作国/アメリカ
  • 上映時間/110分
STAFF
  • 監督/アイヴァン・ライトマン
  • 製作/アイヴァン・ライトマン、ジョー・メジャック、ジェフリー・クリフォード
  • 製作総指揮/ロジャー・バーンバウム、ゲイリー・バーバー、ジョナサン・グリックマン、ナタリー・ポートマン、トム・ポロック
  • 原案/マイク・サモネック、エリザベス・メリウェザー
  • 脚本/エリザベス・メリウェザー
  • 撮影/ロジェ・ストファーズ
  • プロダクションデザイン/アイダ・ランダム
  • 衣装/ジュリー・ワイス
  • 編集/デイナ・E・グローバーマン
  • 音楽/ジョン・デブニー
CAST
  • ナタリー・ポートマン
  • アシュトン・カッチャー
  • ケイリー・エルウィズ
  • ケヴィン・クライン
  • クリス・“リュダクリス”・ブリッジス
  • オリヴィア・サールビー
  • グレタ・ガーウィグ
  • レイク・ベル
  • ミンディ・カリング