おそらく『エピソード1』と『エピソード2』において最も心弾むシーンとは、20世紀FOXのファンファーレが鳴り響き、「遠い昔、遥か彼方の銀河で…」という有名な文句が登場する、あのオープニングの瞬間なのである。
しかし物語が進むに連れて、ジャージャー・ビンクスの冴えないコメディーリリーフぶりや、犬も食わなさそうなパドメとアナキンの恋愛劇に閉口せざるを得なくなり、どんどん尻すぼみになっていくという、アナキン並みの過酷な運命が我々を待ち受けていたのだった。
しかし『スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐』において最も素晴らしいシーンといえば、それはもう文句なしに美しすぎるラストシーンである。
“新たなる希望”であるルーク・スカイウォーカーを抱きかかえたオーウェン夫妻が、タトゥーインの丘陵から2つの夕日を眺めるショットによって、スター・ウォーズはまさにサーガとして完璧に閉じられる。ただこの一点のみにおいて、『エピソード3』は新シリーズ最高傑作の称号を与えられるものと確信する。
物語が進行するための予備知識はすべて前2作で与えられ、アナキンがダースベイダーになるという運命すらも観客は先刻承知となれば、ルーカスは思いっきりアクションシーンに専念できる。
前2作とは違い、『エピソード3』はストーリーテリングという点で大きなアドバンテージを有していたのだ。
冒頭の戦闘機スターファイターによる空中戦から、クライマックスのオビワン対アナキンの一騎打ちまで、『エピソード3』には過去に例がないほどアクションシーンがてんこ盛り。この、“質よりは量”とでも開き直ったかのような物量作戦が、結果的に功を奏した。
よって、アナキンがパルパティーンの正体を知ったあと、やけにすんなり暗黒面に入ってしまうくだりも、「余計な人間ドラマは排除!」という割り切った編集ぶりの産物なのであり、僕は好意的に解釈します。
ジョージ・ルーカスは、過去のインタビューにおいて「この作品は悲劇だ」とか「アナキンが暗黒面に堕ちていくまでを描いた人間ドラマだ」とか発言しているらしいが、このシリーズを悲劇色の強いダークサイド・ファンタジーにさせたくなかったのは、他ならぬルーカス自身ではなかったか。
結局のところ商売人として金銭感覚に優れたルーカスが最終的に選択したのは、物語の強度ではなく映像としての強度である。
問答無用にSFXシーンを挿入させまくったことによって、この最終章はエンターテインメントとしての骨格を保つことに成功したのだ。
- 原題/Star Wars Episode III : Revenge of the Sith
- 製作年/2005年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/141分
- 監督/ジョージ・ルーカス
- 製作/ジョージ・ルーカス、リック・マッカラム
- 脚本/ジョージ・ルーカス、ジョナサン・ホールズ
- 撮影/デヴィッド・タッターソル
- 音楽/ジョン・ウィリアムズ
- 美術/ギャビン・ボクエット
- 編集/ベン・バート
- 衣装/トリシャ・ビガー
- イアン・マクレガー
- ナタリー・ポートマン
- ヘイデン・クリステンセン
- クリストファー・リー
- サミュエル・L・ジャクソン
- フランク・オズ
- イアン・マクダーミド
- ジミー・スミッツ
- アンソニー・ダニエルズ
- ケニー・ベイカー
- ブルース・スペンス
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