IRAの指導者的立場にあるジョニー(ジェームズ・メイスン)が、活動資金を調達するために銀行強奪を計画するが、左肩を撃たれて意識朦朧状態に。
助けを求めてベルファストの街を彷徨うも、市井の人々は警察のお尋ね者であるジョニーと関わりを持つと面倒になるので、まさに「鬼は外」とばかり彼を拒絶する…というのがおおまかな粗筋。
中には、警察に通報して懸賞金を頂戴しようとする浮浪者や、死にかけているジョニーを油絵で表現しようとする画家も現われたりして、様々な思惑が入り乱れまくり。
冒頭に「この物語は北アイルランドの抗争を背景にしているが、描いているのは警察と非合法組織の戦いではなく、それに巻き込まれた人々の葛藤である」と字幕で語られる通り、この作品はポリティカル・サスペンスでもなんでもなく、ノワールな筆致体で描かれた群衆劇なんである。
『第三の男』で光と影の映像美を賞賛された、監督キャロル・リード&撮影ロバート・クラスカーのコンビは、『邪魔者は殺せ』でも北アイルランドを舞台に、絵画のような映像設計を施している。
強烈なモノクロのコントラストに彩られた斜めショットが、朦朧としているジョニーの心象風景を、ヴィヴィッドに映像化。見ている我々にも心理的不安をビシバシ感じさせてしまう。
主人公が身を潜める廃墟をバックに、ボールとたわむれる子供を俯瞰で捉えたショットなんぞ、額縁で飾っておきたくなるほどのコンポジションだ。
本作の主役ジョニーを演じているのは、イギリスの名優ジェームズ・メイソン。出演時間のほとんどが、「銃弾を左肩に受けて意識混濁状態」というなかなかの難役。
スタンリー・キューブリックの怪作『ロリータ』で、少女に異常な独占欲と愛欲に駆られてしまうダメダメ中年男を演じたジェームズ・メイソンだけあって、情緒不安定な役柄はお手のもの。
そんな彼を一途に愛するキャサリン役のキャサリン・ライアンも、クールな顔立ちながらもホットな感情を随所に見せて、最後の悲劇的なラストシーンへの橋渡しをする。
こんな女性と最期を迎えられるんなら、ある意味で男の本懐遂げたり、という気もしないではありませんが。
- 原題/Odd Man Out
- 製作年/1947年
- 製作国/イギリス
- 上映時間/116分
- 監督/キャロル・リード
- 製作/キャロル・リード
- 原作/F・L・グリーン
- 脚本/F・L・グリーン、R・C・シェリフ
- 撮影/ロバート・クラスカー
- 編集/ファーガス・マクドネル
- 音楽/ウィリアム・オルウィン
- ジェームズ・メイソン
- キャサリン・ライアン
- ロバート・ニュートン
- シリル・キューザック
- ダン・オハーリヒー
- ウィリアム・ハートネル
- フェイ・コンプトン
- ジョセフ・トメルティ
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