圧倒的な音楽普遍性をたたえた、キャロル・キング名盤中の名盤
キャロル・キングを、ジャパニーズ・シンガーソングライターの代表格である松任谷由実に例える声をよく聞く。しかし、この解釈は間違ってはいないものの正確でもない。
華やかなステージとゴージャスな衣装、年が経つごとにますますファンテリュージョン化、いやイリュージョン化、いやキダム化するユーミンのステージは装飾化の一途をたどっている。
愛夫マサタカによる楽曲のアレンジも同様。年々厚化粧が濃くなっていくユーミンに対し、化粧っ気ゼロのスッピン顔で攻めるのがキャロル・キングなのだ。別に僕は松任谷由実をケナしている訳ではないので、念のため。
という訳でキャロル・キングを例えるなら、松任谷由実ではなくむしろ荒井由実時代のユーミンだと思う。シンプルなメロディーに微妙な感情の機微を導入し、多感で自意識の高い文科系女子に「これって、あたし!」と思わせられるような普遍性をもたせられるのは、並みのNatural Womanにはできない芸当だ。
キャロル・キングといえば、なんと言っても名盤中の名盤との誉れ高い『つづれおり』(1971年)である(原題は『TAPESTRY』)。『つづれおり』。いいタイトルである。つづれおりとは、糸で絵を描いていくように織っていく織り方のことだが、僕は糸織りについては何の知識もないので、コメントのしようもない。
’71年の第14回グラミー賞においてこの作品は、最優秀アルバム、最優秀レコード、最優秀女性ヴォーカルの主要3部門を受賞。ベトナム戦争に端を発するフラワー・ムーヴメントが花開いていたこの時代にあって、彼女の紡ぐ歌詞はまさにスタンダードな輝きに満ちている。
決して美人とはいえない容姿、お世辞にも巧いともいえない歌唱力。しかしそれ故に彼女の歌は等身大の距離感でリスナーに伝達され、リアルな情景を脳内再生させる。
もしキャロル・キングがニコール・キッドマンのようなゴージャス美女であったなら、夢見る文学少女たちは歌詞世界に自分を投影できなかったであろう。
- アーティスト/Carole King
- 発売年/1971年
- レーベル/Legacy
- I feel the earth move
- So far away
- It’s too late
- Home again
- Beautiful
- Way over yonder
- You’ve got a friend
- Where you lead
- Will you still love me tomorrow
- Smackwater Jack
- Tapestry
- You make me feel like a natural woman
- Out in the cold (previously unreleased)
- Smackwater Jack (2) (live)
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