ワン・プラス・ワン/ジャン・リュック・ゴダール

ワン・プラス・ワン [Blu-ray]

ストーンズPV+奇妙キテレツな政治的寸劇 ゴダールの大胆極まりない野心作

ゴダールという御仁は、70年代より毛沢東主義に傾倒し、政治的主題を扱った映画を次々と発表していく訳だが、にもかかわらず作風はポップでグルーヴィー。ウンザリするような説教を聴かされる割には嫌みがない。

そういう意味でも、『ワン・プラス・ワン』(1968)のような映画は世界でただ一人、ジャン・リュック・ゴダールのみが撮り得る作品なんだろう。

当初はジョン・レノンにキリスト役で映画出演を打診していたのだが、すげなく断られてしまい、じゃあ代わりにローリング・ストーンズの録音風景を撮ろう、ということになったらしい。うーむ、ゴダールらしい思いつき行動なり。

その時点でゴダールのストーンズ予備知識はゼロに等しく、じゃあ彼の政治思想も織り込んじゃえ!ということで、『悪魔を憐れむ歌』のレコーディング風景と、政治的発言を語る人たちのインタビュー風景を交互に描くという、尋常ならざる映画が完成した。

都市の片隅でリロイ・ジョーンズの『ブルースの魂』を読み上げる黒人たち、ヒットラーの『わが闘争』を朗読するポルノショップのオーナー、あらゆる質問に「はい」と「いいえ」で答えるアンヌ・ヴィアゼムスキー。

あらゆる政治的シークエンスが寸劇のように展開され、ゴダールはそれをワン・ショットの長回し撮影で捉える。ゴダールは自らのイデオロギーを誇示しない。ただ淡々と、観るものに「思索すること」、「対話すること」を求めるだけだ。すべては記号化されている。咀嚼なしにそれを飲み込めやしない。

しかしながら僕には少々咀嚼能力が足りなかったようで、ロンドンで『悪魔を憐れむ歌』のレコーディングに苦心していたローリング・ストーンズを、左右のパンを多用した長回し撮影で延々撮り続けるシーンは、正直「退屈」の一言。

多重録音が可能となった当時のスタジオワークによって、音楽に段々と生命が吹き込まれていく様子がリアルに刻印されているんだが、傑作の誕生に立ち会っているにもかかわらず、僕にはまったく高揚感が感じられず。

Beggars Banquet

政治的にも音楽的にも、『ワン・プラス・ワン』は極めて時代的な作品である。五月革命で揺れていた時代背景を、ストーンズのPVと奇妙キテレツな政治的寸劇で表現してしまおうという、ゴダールの野心は大胆極まりなし。

でも僕の頭は途中からクラクラしっ放し。在りし日のブライアン・ジョーンズを映像で拝見するたびに、僕の眼は潤みがち。

DATA
  • 原題/One Plus One
  • 製作年/1968年
  • 製作国/イギリス
  • 上映時間/101分
STAFF
  • 監督/ジャン・リュック・ゴダール
  • 脚本/ジャン・リュック・ゴダール
  • 製作/マイケル・ピアソン、イェーン・クォーリア
  • 撮影/トニー・リッチモンド
  • 音楽/アーサー・ブラッドバーン、デリック・ボール
  • 編集/ケン・ラウルス
CAST
  • ミック・ジャガー
  • ブライアン・ジョーンズ
  • キース・リチャーズ
  • チャーリー・ワッツ
  • ビル・ワイマン
  • アンヌ・ヴィアゼムスキー
  • イェーン・クォーリア

アーカイブ

メタ情報

最近の投稿

最近のコメント

カテゴリー