シャイニング/スタンリー・キューブリック

仕事ばかりで遊ばない ジャックは今に気が狂う
仕事ばかりで遊ばない ジャックは今に気が狂う
仕事ばかりで遊ばない ジャックは今に気が狂う
仕事ばかりで遊ばない ジャックは今に気が狂う…

雑誌「LOOK」のカメラマンという職を22歳で辞してから、映画監督として名を馳せるまで、スタンリー・キューブリックはチェスで生計を立てていた、というのは有名な話。

学校の成績は概して良くなかったものの、IQテストではずば抜けた知能を示したという彼にとって、映画製作とは数学的思考による産物なのだろう。特にレンズと構図の選択は、生理的欲求ではなく論理的帰結として決定される。

キューブリックは、シンメトリーな構図を偏愛する作家だった。ステーブルで整然とした世界は、厳格なまでに左右対称すぎるがゆえ、逆に冷え冷えとした非現実感を醸成する。

スティーヴン・キング原作のモダン・ホラー『シャイニング』を映像化するにあたって、このシンメトリーが今までのフィルモグラフィー以上に頻発されるのは、いわば物語上の必然的要請。

シャイニング(上) (文春文庫)
『シャイニング』(スティーヴン・キング)

特に双子の少女を捉えたショットは、一瞬ながらもその完璧な左右対称性によって、強烈に脳内に記憶される。

ほとんどのシーンが、巨大ホテルを舞台にした密室劇であるだけに、フィックスの構図だけではどうにも映画的に弱い。そう考えたキューブリックは、全面的にステディカムを活用することを決める。

“防振激減装置”とも呼ばれるこのカメラを使うことによって、滑らかな移動撮影が可能に。かくして、ダニー少年が三輪車でホテル内を駆け回ったり、斧を携えたジャック・ニコルソンが、雪の降りしきる迷路で子供を追いかけ回したり、映像的興奮に満ちたシーンが完成したのだ。

しかし、過剰な演出に陥らないキューブリックの作品世界を根底から崩しているのが、ジャック・ニコルソン自己陶酔的演技。怪演とオーバーアクトは紙一重かも知れないが、少なくとも僕には、狂人の役を嬉々として演じているひとりよがりな芝居というイメージの方が強い。

スティーヴン・スピルバーグも同じ意見だったらしく、後年彼はキューブリックにそのことを問いただしたが、俳優論の違いだと一蹴されている。

一方のシュリー・デュバルは、何とも見事なキャスティング。病弱で神経質そうな外見が、ハマりすぎるほどにハマっている。ジャック・ニコルソンに襲われて絶叫するシーンなんぞ、まさに彼女の真骨頂。

普段からおっかなびっくりしている容姿のこの女優に、観客はいたずらに恐怖心をあおられてしまう。血が通っていないのでは?と疑ってしまうくらいに皮膚が白すぎるのもブキミだ。実はお前が一番コワイぞ、シュリー・デュバル!!

《補足》
後にキューブリックの娘が撮影したメイキング・フィルムをみたのだが、シュリー・デュバルは普段から文句タラタラで、相当扱い難い女優であった様子。

タバコをスパスパ吸いながら、えらく高慢チキな態度である。まあキューブリック相手に毎日撮影していれば、ストレスもたまるだろうけど。ちなみにジャック・ニコルソンは普段からキレていました。

DATA
  • 原題/The Shining
  • 製作年/1980年
  • 製作国/イギリス
  • 上映時間/119分
STAFF
  • 監督/スタンリー・キューブリック
  • 製作/スタンリー・キューブリック
  • 脚本/スタンリー・キューブリック
  • 製作総指揮/ジャン・ハーラン
  • 原作/スティーヴン・キング
  • 脚本/ダイアン・ジョンソン
  • 撮影/ジョン・オルコット
  • 音楽/ベラ・バートク
  • 美術/レス・トムキンズ、ロイ・ウォーカー
CAST
  • ジャック・ニコルソン
  • シェリー・デュヴァル
  • ダニー・ロイド
  • スキャットマン・クローザース
  • バリー・ネルソン
  • フィリップ・ストーン
  • ジョー・ターケル
  • アン・ジャクソン

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