ミステリーの論理性なんぞアウト・オブ・眼中!祟りで人がバッタバッタ死んでいく恐怖映画
【思いっきりネタをばらしているので、未見の方はご注意ください。犯人もバラしてますので。】
横溝正史ワークスで代表作のひとつに挙げられている『八つ墓村』は、過去3度映画化されている。
1951年に公開された松田定次(監督)&片岡千恵蔵(主演)バージョン、1977年に公開された野村芳太郎(監督)&渥美清(主演)バージョン、1996年に公開された市川崑(監督)&豊川悦司(主演)バージョン。特に有名なのは、「たたりじゃー!」というコピーが当時の流行語にまでなった’77年度版だろう。
’77年度版で特筆すべきは、祟りを利用した連続殺人事件が起きるのではなく、ホントの祟りで人がバッタバッタと死んでいくこと!ミステリーの論理性なんぞアウト・オブ・眼中。
何の確証もないまま、ベラベラと真犯人を指摘する渥美金田一に、下条アトム演じる警察官が「あのー物証はあるんですか?」と聞かれても、「そんなことよりも、この事件は不思議な点があるんですよ」とケムに巻く始末。こんなところで寅さんキャラは期待してないっちゅーの!
『本陣殺人事件』(1946年)や『犬神家の一族』(1950年)、『悪魔が来りて笛を吹く』(1951年)などと比べても、頭一つ抜けたゴスっぷりを誇る『八つ墓村』だが、正直本格ミステリーとしては、底が割れた感があるのは否めない事実。
そんな原作を映画化するにあたって、あえて論理性を無視した恐怖映画として創り上げてしまったのは、ある意味賢い選択だったのかも。
日本屈指のシナリオライター橋本忍は、山村の因習や血なまぐさい人間関係といった横溝的コードを、母子モノという王道の人情話もまぶしつつ、ホラーとして昇華させている。
という訳で、本作の見所はトーゼンのごとく恐怖描写ということになるのだが、ハッキリいってかなりのエクストリーム演出っぷり。
桜吹雪が舞う中、白塗りの山崎努が山林を駈けていくショットはあまりにも有名だが、老婆を井戸に突き落とすわ、生後間もない乳飲み子を斬り殺すわ、散弾銃で村人を撃ちまくるわ、正視に耐えない大殺戮のオンパレード。
村が祟られるきっかけとなった落武者の惨殺シーンも、稲葉義男が胸を釜で引き裂かれるわ、田中邦衛が首を切り落とされるわの、酸鼻を極めた地獄絵巻だ。
真犯人の小川真由美が妖怪化してショーケンを追いかけ回すシーンなんぞ、これだけ取り出せばギャグ以外のなにものでもないが、背筋が凍るような殺戮シーンをこれだけ観させられていると、観客も生半可なツッコミはできず。
インサートされる「おぉおお…ひぃいいい…」といううめき声だけで、僕なんぞは恐怖に震えておりました(もともと小川真由美がホラー顔だし)。
『八つ墓村』は、「嘔吐物の量が尋常ではない各役者の死にっぷり」といった恐怖描写に畏れおののき(特に工藤校長を演じる下條正巳の死にっぷりは凄まじい!)、「自らの出生の秘密を探るうちに今は亡き母親の真実の愛を見つける」といった人情描写に涙すべき映画である。
それは「横溝映画にミステリーの本格性などいらぬ」という、大胆極まりない宣言でもあるのだ。
- 製作年/1977年
- 製作国/日本
- 上映時間/151分
- 監督/野村芳太郎
- 製作/野村芳太郎、杉崎重美、織田明
- 原作/横溝正史
- 脚本/橋本忍
- 撮影/川又昂
- 音楽/芥川也寸志
- 美術/森田郷平
- 編集/太田和夫
- 録音/山本忠彦
- 照明/小林松太郎
- 助監督/大嶺俊順
- 萩原健一
- 小川真由美
- 山崎努
- 山本陽子
- 市原悦子
- 中野良子
- 加藤嘉
- 井川比佐志
- 花澤徳衛
- 夏八木勲
- 田中邦衛
- 藤岡琢也
- 渥美清
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