ケミカル・ブラザースが’90年代に響かせたマッシヴなハンマー・ビート
2005年の東京ベイNKホールのライヴでは、彼らの登場と共にビートルズの『Tomorrow never knows』がケミブラ・バージョンで流れていた。
そういや、彼らの2ndアルバム『Dig Your Own Hole』(1997年)に収録されていたM-5「Setting Sun』が、’90年代バージョンの『Tomorrow never knows』と言われていたこともあったっけ。
Oasisのノエル・ギャラガーをボーカリストに起用したこのナンバーは、シングルチャートでナンバー1に輝き、いわゆるデジタル・ロックがポピュラリティーを獲得するきっかけとなった。ビートルズが’60年代に試みたサイケデリアは、30年以上の時を経て、新たな音楽の息吹を与えたんである。
このアルバムがリリースされた’97年頃は、ロックとテクノの間には、明確なボーダーラインが存在していた。しかし、ドラムン・ベースを大胆に取り込み、エッジのきいたビッグ・ビートでクラバーどもの心をわし掴みにした「デジタル・ロック」は、保守的なロック・オリエンテッド・リスナーをも巻き込むムーヴメントに。
その意味で『Dig Your Own Hole』は、プロディジーの『Fat Of The Land』(1997年)と並んで重要視されるべきアルバムである。
マンチェスター出身のDJトム・ローランズとエド・シモンズが、彼等にとってゴキゲンなラボラトリーであるDJブースから放ったサウンドは、ホットなのにクール、ヘヴィーなのにダンサンブル、パンキッシュなのにエレクトリックな重量級のダンスグルーヴ。オープニング・ナンバーの『Block Rockin’ Beats』から、アゲアゲ状態!
ここからM-8の『Get Up On It Like This』まで、アッパーなノリがノンストップで繰り広げられ、一転M-10『Where Do I Begin』では、モノクロームの空間に一筋の光明が差し込むかのような叙情性を漂わせる。
そしてM-11『Private Psychedelic Reel』のサイケデリックな音響空間が、高いテンションをキープしつつ、ラストまで一直線に上昇していく。
アンダーワールドやスクエアプッシャーがある種の洗練に向かっていったのと逆行するように、ノエル・ギャラガーは愚鈍なまでにマッシヴなハンマー・ビートを響かせた。そのサウンドは、今でも十分有効である。繰り返すようだが、これはやっぱり’90年代を代表する重要盤だ。
- アーティスト/Chemical Brothers
- 発売年/1997年
- レーベル/Virgin
- Block Rockin’ Beats
- Dig Your Own Hole
- Elektrobank
- Piku
- Setting Sun
- It Doesn’t Matter
- Don’t Stop The Rock
- Get Up On It Like This
- Lost In The K-Hole
- Where Do I Begin
- Private Psychedelic Reel
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