’60年代を思いっきり意識した、確信犯的ビンテージ・サウンド
たしか夜中の「MTV」で初めて観たんだと思うが、マーク・ロマネックが監督したレニー・クラヴィッツ『Are You Gonna Go My Way』のPVは、とにかく衝撃的だった。
円形の小型ドーム内にディスコティークな照明がピカピカと照らされ、所狭しと踊り狂うオーディエンスが360度取り囲むなか、レニクラが陶酔しきった表情でギターをかき鳴らし、シャウトしまくる。いやー、とにかく理屈抜きにカッコ良かった。
デカいサングラスをかけた黒人姉ちゃんによるポーカー・フェイス・ドラミングも超クール。広角レンズを駆使して密室感・圧迫感を強調したマーク・ロマネックの映像センスが光っていた。
そして、驚くべきはそのサウンド。直線的でソリッドなギター・リフと、タイトなドラミング、そしてブリービーなベース・ラインが重ね合わさって、陶酔的グルーヴを作りだしている。こいつはもう踊るっきゃない!
マドンナの『Justify My Love』(1990年)をプロデュースしたり、『Let Love Rule』(1989年)、『Mama Said』(1991年)という2枚のソロ・アルバムをリリースするなど、洋楽ファンにはすでにお馴染みの存在だったレニクラだが、僕は『Are You Gonna Go My Way』で初めて、彼と邂逅を果たしたのである。
だもんで、彼にとって3枚目のアルバムとなる『Are You Gonna Go My Way』(1993年)を聴いてみたところ、その楽曲群にまたも驚かされた。
ジミヘン風サイケデリック・ロックあり、カーティス・メイフィールド風ソウル・ナンバーあり、ボブ・マーリー風レゲエ・ナンバーありと、先祖帰りか!と思うくらいに’60年代を思いっきり意識した、確信犯的ビンテージ・サウンド。
しかしそれは引用とリミックスに重きをおいたヒップホップ的な手つきではなく、あくまで己の音楽的素養を形成したサウンドへの素直な回答だ。ここまでアナクロに徹されると、逆に嬉しくなってしまう。
特に個人的に好みなのはM-5『Just Be A Woman』。ディレイをかけたドラムと、幻術的なギター・ワークが相まって、ストレンジなフォルムを露出している。
当時彼は、「黒いジョン・レノン」などというありがたくないニックネームを頂戴していたようだが、確かにこのナンバーには、どこかジョン・レノン的な、マジカルな輝きに満ちている。
その才能は、ビートルズを牽引した天才ミュージシャンと比肩されるほどに、傑出したものだ。僕も、彼にはただただ畏敬の念を深く抱くばかりであります。
当時レニクラがヴァネッサ・パラディのカレシであることを知り、畏敬の念と同時に激しい憎悪を燃やすようになるのは、もう少し後になってからですが。
- アーティスト/Lenny Kravitz
- 発売年/1993年
- レーベル/Virgin
- Are You Gonna Go My Way
- Believe
- Come on and Love Me
- Heaven Help
- Just Be a Woman
- Is There Any Love in Your Heart
- Black Girl
- My Love
- Sugar
- Sister
- Eleutheria
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