’90年代を席巻した、フレンチタッチの名盤
60年代のフレンチポップは、シャンソンと並んで世界的ムーブメントを巻き起こした“音楽の新しい波”(ヌーベルヴァーグ)だった。そしてフランスは、90年代末から新しい音楽ムーブメントを再び世に送り出している。クラブ・シーンから火がついた「フレンチタッチ」だ。
別名「フィルターハウス」とも呼ばれる通り、フィルターをかけまくることによって独特の浮遊感を生み出すエレクトロニカ・ミュージックである。
フレンチポップは、「フランス産ポップ・ソングとアメリカ産ロックンロールとの融合」によって産み出された音楽だったが、フレンチタッチは「無国籍サウンドを渾沌とミクスチャー」することによって産み出された音楽、と言っていいだろう。
その代表格といえば、やはりダフト・パンク。5歳のときから『宇宙海賊キャプテンハーロック』だの、『宇宙戦艦ヤマト』だの、ジャパニメーションを浴びるほど観てきたという彼らの音楽には、“古き良き未来”とも言うべきレトロフューチャー感が滲み出ている(実際、彼らのPVを制作したのは我らが松本零士センセイである!!)。
だが僕としては、もう一つのグループの名前を強くメンションしておきたい。ポップ・デュオのエールだ。筆者が彼らの名前を初めて知ったのは、ソフィア・コッポラ監督の『ロスト・イン・トランスレーション』(2003年)に、『ALONE IN KYOTO』という曲を提供していたことから。古都の風情をメロウな感性で叙情的に描き出した、ナイスなトラックであった。
だもんで、当然彼らのデビュー・アルバム『Moon Safari』(1998年)もチェックしてみたところ、これが大名盤。アトモスフェリックなラウンジ感+エレクトロニック・サウンドに溢れた、’90年代フレンチタッチを代表する一枚だ。
どのトラックも捨て曲ナシだが、あえてハイライトを挙げるならやはりM-2『Sexy Boy』とM-6『Remember』か。特に『Sexy Boy』は、フランツ・フェルディナンドが後年カバーしたほどの名曲。
これ以上振り切ると下品になってしまうけど、ギリギリで洒脱絶妙をキープしている、絶妙なアレンジ感覚。この独特すぎるディスコティーク・サウンドは、ちょっと他の追随を許さない。
ちなみに彼らは、ロボットアニメ『UFOロボ グレンダイザー』にハマッていたと告白している。何でフレンチタッチ界隈は、古い日本アニメ・フリークが多いんだ?
- アーティスト/Air
- 発売年/1998年
- レーベル/Source
- La femme d’argent
- Sexy Boy
- All I Need(feat. Beth Hirsch)
- Kelly Watch the Stars
- Talisman
- Remember
- You Make It Easy
- Ce matin-là (From “L’uomo in più”)
- New Star in the Sky
- Le Voyage de Pénélope
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