The Lemon Of Pink/Books

Lemon of Pink

“たおやかさ”と“しなやかさ”を感じさせる、電子音のさざめき

今からもう10年以上前になるが、SEとして日々業務に忙殺される傍ら、エレクトロニカ系ミュージシャンとしても活動も行っている会社同僚のH氏が「オススメですよー」と貸してくれたのが、The Booksの2ndアルバム『The Lemon Of Pink』だった。

彼らについてはまったく知識がなかったのだが、Nick ZammutoとPaul de Jongによって結成されたニューヨーク発のエレクトロニカ・ユニットで、すでにドイツのレーベルから3枚アルバムをリリースしている。Prefuse73とのコラボ歴もありということで、まったくもって自分の浅学を痛感した次第。

Vocal Studies + Uprock Narratives (WARPCD83)

んで、早速家に帰って聴いてみたところ、これが尋常じゃないくらいに大傑作なアルバム。弦楽器をベーシックにアナログな手続きで鳴らされた生音を、独特のカット・アップ感覚でコラージュ。

サンプリング・ミュージックでありながら、ペンギン・カフェ・オーケストラのような“たおやかさ”と“しなやかさ”を感じさせる、実に肉感的な作品なのだ。

ポエトリー・リーディングのような人間の「声」を、メロディーではなく環境音として配置しているセンスは、ローリー・アンダーソンにも近い感覚があるかもしれない。

Big Science

オープニングを飾るM-1『The Lemon Of Pink』からゾクゾクさせられる。排他的で無機質なミュージック・コンクレート風アプローチの楽曲と思いきや、バンジョーの能天気なメロディーが牧歌的な風情を漂わせる。

それでいて、アヴァン・ポップな歌モノとしても成立してしまっているのだから、たまりません。「いーしやーき」という日本語が穏やかな世界観を強固なものとし、幼年時代の原風景をも回帰させる。

弦楽器のループ音+環境音+謎の日本語で構築された音響空間は、ハイファイ<ローファイな感性で紡ぎ上げられたピースフル・プレイスだ。もはやエレクトロニカの定義は、電子音がピコピコと飛び回るサウンドを指すものではない。

『The Lemon Of Pink』は、ゼロ年代のポスト・エレクトロニカの代表格として語られるべきアルバムである。

DATA
  • アーティスト/Books
  • 発売年/2003年
  • レーベル/Tomlab
PLAY LIST
  1. The Lemon Of Pink
  2. The Lemon Of Pink, Pt 2
  3. Tokyo
  4. Bonanza
  5. S Is For Evrysing
  6. Explanation Mark
  7. There Is No There
  8. Take Time
  9. Don’t Even Sing About It
  10. The Future, Wouldn’t That Be Nice?
  11. A True Story Of A Story Of True Love
  12. That Right Ain’t Shit
  13. PS

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