“脱”電気グルーヴを果たした、まりん流テクノ・ミュージック
間違いなく、砂原良徳は電気グルーヴにおけるサウンド・メインキングのキーマンだった。しかし彼は石野卓球が信奉するような、ハードエッジなテクノ・ミュージックに対しては距離があったという。
砂原良徳はバンド活動と並行しながら、エアポートをテーマにした『CROSSOVER(1995年)』、『TAKE OFF AND LANDING』(1998年)、『THE SOUND OF 70’』(1998年)の、いわゆる“航空三部作”をリリース。流れてくる音楽は、テクノに背をむけるかのようなラウンジ・ミュージックだった。
そして、2001年。バンド脱退後に発表したソロ・アルバム『LOVEBEAT』(2001年)で、砂原良徳は満を持して“まりん流テクノ・ミュージック”を提示する。
電気グルーヴが創り上げてきたアッパーなテクノからは、180°転換。そこには極限までにシンプルで、極限までにミニマルな、内省的な音像があった。砂原良徳はおよそ2年という時間を費やして、ヤスリで陶器を磨き上げるがごとく、ゆっくりと音を紡ぎあげていったのである。
砂原良徳はあるインタビューで、
「エレクトロニカは絵で例えると、点描のように細い線で描くイメージだが、『LOVEBEAT』は太いマジックで書いているような音楽」
と語っている。
全体のトーンをかたちづくる大きな輪郭のビートがあり、そこにエッジの丸い音の塊が配列されていく。なんともシンプルな立体構造だ。
リリースから20年以上経った今でも、『LOVEBEAT』は今なお僕の愛聴盤であり続けている。音圧も、音の定位も、そして音の滑らかさも、全てが気持ちいい。その“気持ち良さ”を極限まで突き詰めるために、砂原良徳は2年もの時間をかけたのだ。
うん、なんだかエロい行為ですな。
- アーティスト/砂原良徳
- 発売年/2001年
- レーベル/キューンミュージック
- EARTH BEAT
- BALANCE
- IN AND OUT
- LOVEBEAT
- SPIRAL NEVER BEFORE
- ECHO ENDLESS ECHO
- HOLD ‘ON TIGHT
- SUN BEATS DOWN
- BRIGHT BEAT
- THE CENTER OF GRAVITY
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