世界遺産級音楽資産Blue Noteをコラージュしまくった、リファランス・ミュージック
コーネリアスのインタビュー記事を読んでいたら、「今、著作権の問題っていうのは本当に厳しい」ということを言っていて、その著作権問題処理のためにリミックス作品集『CM3』(2009年)のリリースが遅れてしまったらしい。
確かに考えてみれば規制がまだ厳しくなかった80年代~90年代前半に比べて、21世紀はサンプリング・ミュージックには冬の時代なのかもしれない。
クリアランスを法的に解決するスペシャリストを抱えないと、パクられ元のレーベルからすぐに訴えられて、エラいことになってしまう。そういや、KLFみたいに人様の楽曲を無断でサンプリングする輩もいたなあ。
過去の膨大なミュージック・アーカイヴを自由にエディットすることで、リスナーに新しいビートを提供するヒップホップというジャンルにおいては、これは死活問題である。ヒップホップとは、過去を参照することで現在をブロウアップさせる、リファランス・ミュージックなのだから。
しかしながら、西海岸のアンダーグラウンド・シーンを騒がせてきた若手プロデューサーのマッドリブは、思いがけない僥倖にありついた。ジャズの超名門レーベルBlue Noteの音源ストックをいくらでも自由に使ってよし!という、アンビリーバボーなチャンスを得たんである。
そもそもマッドリブは、ジャズ・トランペッターのジョン・ファディスを実の叔父に持ち、幼少時からジャズには親しんでいたらしい。
僕はジャズの素養がないので、各楽曲の元ネタを解説することはできないが、ファンキーなブレイクビーツにドナルド・バードやホレス・シルヴァーの音源を未加工でインサートさせるその手つきは、素材本来の旨味を活かした“懐石料理”とでもいうべき素朴さ。
特にM-10『Steppin’ Into Tomorrow』のサウンド・プロダクションはソフトな高揚感があって、一気にテンションがアガります。いやマジでサイコーのトラックですよ、コレ。中毒性アリ!
Blue Noteという世界遺産級音楽資産をコラージュするにあたって、「ドープさが足りない」とか「カジュアルすぎる」とか「作り込みが甘い」などの意見もチラホラあるようだが、僕のようなビギナー・リスナーには心そのサウンドは地よく響く。
巨大な山脈を前にしてまったく気負っていないカジュアルさが逆にいいではありませんか。
- アーティスト/Madlib
- 発売年/2003年
- レーベル/Blue Note
- Introduction
- Slim’s Return
- Distant Land: Hip Hop Drum Mix
- Mystic Bounce
- Stormy
- Blue Note Interlude
- Please Set Me At Ease
- Funky Blue Note
- Alfred Lion Interlude
- Steppin’ Into Tomorrow
- Andrew Hill Break
- Montara
- Song For My Father
- Footprints
- Peace/ Dolphin Dance
- Outro
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