徹底した匿名性によって、少女漫画的 or ライトノベル的世界を構築
2011年冬、下北沢のヴィレッジ・バンガード店内を徘徊していたところ、懐かしさとけだるさにコーティングされた素敵ポップ・ソングが耳に入ってきた。
「何じゃこりゃー!」と松田優作ばりの雄叫びを上げながら、かかっているCDを調べてみたところ、さよならポニーテールのメジャー・デビューアルバム『魔法のメロディ』(2011年)であることが判明した。
ちょっと微熱を帯びた青春リリックと、シャボン玉のようにはかなく消え入りそうなヴォーカル。その日のうちにこのアルバムは僕のiPodのヘビロテと相成った。
果たしてさよならポニーテールとは、何者なのか!?覆面ユニットゆえ極端にインフォメーションが不足しているのだが、ネットに散乱している情報の断片をかき集めると、こんな感じらしい。
- さよならポニーテールは、みぃな、なっちゃん、あゆみんの女の子3人組を中心にした、総勢10人程度の覆面プロジェクトである。他にイラスト&ツイッターつぶやき担当のゆりたん、作詞&作曲を担当するふっくん、324P、プロデューサー風のクロネコなどのメンバーがいるらしい。
- ライブはもちろん、メディア露出は一切行わない。活動報告はMyspaceとTwitterオンリー。
- 歌われる詩世界は、10代女子の心情や何気ない日常を描いたものがほとんど。
- ヴォーカルはみぃなが務めているが、楽曲によってなっちゃん、あゆみんが歌う場合もあり。
- 自主製作アルバム『モミュの木の向こう側』が、ノンプロモーションながら異例のヒットを飛ばし、およそ半年足らずでメジャーデビューを果たした。
- メジャーデビューに合わせて、淡い女子校生活を描いたマンガ作品『きみのことば』が太田出版より発売された。
つまりさよならポニーテールとは、徹底した匿名性によって、少女漫画的もしくはライトノベル的世界を音楽シーンで構築し、同時にマンガ連動というメディアミックスをも展開させる、ひとつの〈物語〉なのだ。
実際、さるインタビューでクロネコ氏も「どっちかというと音楽だけじゃなくて、映画や小説、ラノベ、漫画、ゲームとかに距離が近いから」と発言している。さよポニのライバルは、相対性理論やチャットモンチーではなく、『けいおん!』だろう。
しかし『魔法のメロディー』が面白いのは、リリックが少女漫画的世界観に統一されているにも関わらず、サウンド・クリエーションには幅を持たせていることだ。
M-3『無気力スイッチ』は、ラップもインサートしたエレポップだが、M-1『あの頃』、M-4『放課後黄昏交差点』はメロディーといいいアレンジといい、おもいっきり80年代シティポップ。
M-6『それを愛と…』のイントロなんて、山下達郎のバラードっぽい!M-7『きみに、逢いたい』のけだるいユーフォニウムの響きは、アダルト・オリエンテッドな匂いも感じさせる。
表面的にはゆるーい感じでコーティングされているものの、さよならポニーテールは極めて理知的で緻密なサウンド・プロダクションが施された、プロフェッショナルな仕事である。
この甘い感傷性は、一度聴いたらクセになること間違い無し!
- アーティスト/さよならポニーテール
- 発売年/2011年
- レーベル/エピックレコードジャパン
- あの頃
- 自転車えくすぷれす
- 無気力スイッチ
- 放課後黄昏交差点
- ナタリー
- それを愛と…
- きみに、逢いたい
- まったりしてしまったり
- きみはともだち
- 甘い感傷
- ふぁんファ~れ
- 魔法のメロディ
最近のコメント