深田晃司という映画作家が貫いてきた主題を一言で言い表すなら、それは「親密性が社会に捕獲される瞬間」ではないだろうか。愛情や、友情や、善意といった感情がある境界線を越えたとき、それは個人の平穏を脅かす災厄へと反転し、自分自身を窮地へと追い詰めていく。その変容のプロセスを、深田は一貫して描いてきた。
例えば、カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門で審査員賞を受賞した『淵に立つ』(16)。下町で町工場を営む平穏な家族のもとに、夫の旧友だという男が突然現れ、居候を始める。夫の贖罪、妻の信仰、そして家族の善意。一人の男という“異物”の介在によって、積み上げられてきた親密さは、あっという間に互いを破壊し合う凶器へと変貌を遂げる。
この「親密さが牙を剥く」構造は、その後の作品でより社会的な広がりを見せていく。『本気のしるし 劇場版』(20)では、一人の女性を助けたいという善意が、主人公の平穏な日常を跡形もなく破壊していく。本来なら美徳とされるはずの行為が、ここでは依存と執着を生み、生活を侵食し、本人を追い詰める社会的な毒になり得ることを、この映画は冷徹に突きつける。
ぜひご一読ください!
- 製作年/2026年
- 製作国/日本
- 上映時間/124分
- ジャンル/ドラマ、社会派
- 監督/深田晃司
- 脚本/深田晃司、三谷伸太朗
- 製作/市川南、上田太地
- 製作総指揮/山口晋、臼井央
- 制作会社/東宝
- 撮影/四宮秀俊
- 音楽/agehasprings
- 編集/シルビー・ラジェ
- 美術/松﨑宙人、長谷川功
- 衣装/キクチハナカ
- 録音/山本タカアキ
- 照明/後閑健太
- 齊藤京子
- 倉悠貴
- 仲村悠菜
- 小川未祐
- 今村美月
- 桜ひなの
- 唐田えりか
- 津田健次郎
- 恋愛裁判(2026年/日本)