『リンカーン』の考察/解説レビューをCINEMOREに寄稿しました

『リンカーン』歓喜のベル、祝福の光」という考察/解説レビューをCINEMOREに寄稿しました。

映画『リンカーン』(12)は、冒頭から南軍と北軍の血生臭い戦闘が描かれる。激しい雨の降りしきるなか、銃剣で心臓を突き刺し、泥の中に顔をうずめる。南北戦争で最も戦死者を出した戦闘の1つ、ジェンキンスフェリーの戦いだ。

だがスティーヴン・スピルバーグは、オマハ・ビーチでの地獄絵図を延々とスクリーンに焼き付けた『プライベート・ライアン』(98)とは異なり、すぐにカットを切り替える。映し出されるのは、「月給が白人兵より3ドル少ない」、「黒人の士官がいない」という黒人兵の訴えに耳を傾ける、エイブラハム・リンカーン大統領(ダニエル・デイ=ルイス)の姿。やがて彼の元には白人兵たちも集まり、ゲティスバーグ演説に感銘を受けたことを興奮気味に伝える。わずか開巻数分で、この映画が“戦い”の映画ではなく、“対話”の映画であることをスピルバーグは鮮やかに描き出す。

そして本作は、“駆け引き”の映画でもある。そもそも南北戦争は、奴隷制度を巡る対立から始まった(自由貿易を主張する南部と、保護貿易を主張する北部との対立などもあった)。綿花など農業中心の南部において、黒人の労働力を確保するために奴隷制は不可欠。一方北部では工業化が進み、奴隷制に反対の立場をとっていた。リンカーンは1862年に奴隷解放宣言をしたものの、実質的な効果は極めて限定的。真の奴隷制廃止を実現させるためには、憲法修正案第13条を可決させることが必須条件なのだ。

ぜひご一読ください!

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