おとぎ話から抜け出してきたかのような、柔らかなトイトロニカ
カリム・クラスマンとガリア・デュラントによるイギリス産エレクトロニカ・デュオ、Psapp。プサップではなくサップと発音するので念のため。僕は彼らの名前を、Sketch Showのリミックス・アルバム『sketches & notations-SKETCH SHOW REMIXES』(2004年)で『ATTENTION TOKYO』を手がけていることから知った。
クールでメタリックな手触りの原曲を、丸味のある柔らかなトイトロニカのフォームに解体・再構築したセンスに、好感を持った次第(カリム・クラスマンはもともとレコーディングスタジオのエンジニアである)。
ということで、彼らの1stアルバム『Tiger, My Friend』(2004年)を聴いてみたところ、トイギター、壊れたオモチャ、オルゴール、オルガンなどで奏でられるアナログなトイポップ・サウンドに、浮遊感のある電子音が巧妙に織り交ぜられていて、否が応にも快感中枢が刺激されまくり。
よーく耳をそばたてて聴いてみれば、ほとんどの曲が変拍子で、複雑怪奇なグルーヴ。それを前衛音楽的に小難しく表出するのではなく、まるでおとぎ話から抜け出してきたかのような、ノスタルジックでキュートなテクスチャーで覆っているのだ。
それでいて、ムームやロイクソップに代表される北欧エレクトロニカのクールな質感もキープ。それはまるで、ステレオラブ meets マウス・オン・マーズともいうべき仕上がりだ。系統としては、ラリ・プナやMs.John Sodaに近いかも。
カリムとガリアは、実は子供をもうけている実質上の夫婦。ベビールームをスタジオに改造してこのアルバムを創り上げたというんだから、チャイルディッシュな音像なのはトーゼンか。
これだけ書くと、いかにも日だまりのなかでノホホンと過ごしている、スロウライフ・カップルを想像するだろうが、英語版Wikipediaによると、
Psapp are known for their humour on stage, throwing cats (hand-made by the band) into the audience.
(ハンドメイドの猫を観客に向かって投げつけるなど、彼らのステージはユーモアがあることで知られている)
とあり、意外にもバイオレンス系。一体どんな夫婦なんだ。
- アーティスト/Psapp
- 発売年/2004年
- レーベル/Leaf
- Northdown Flat B1
- Rear Moth
- Leaving In Coffins
- Calm Down
- Velvet Pony
- About Fun
- Curuncula
- King Kong
- The Counter
- Chapter
- Tiger, My Friend
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