突入せよ! あさま山荘事件/原田眞人

突入せよ! 「あさま山荘」事件 Blu-ray スペシャル・エディション

徹頭徹尾、佐々淳行の自慢話を聞かされる“あさま山荘事件”

僕は1973年生まれで、あさま山荘事件が起きた1972年2月19日はまだこの世に生を受けていない。トーゼン全共闘や全国学園闘争の流れなんぞ、まったく理解できておりません。その意味でも、まず「あさま山荘事件」とはどのような事件だったのか、概要をまとめておきたいと思う。

そもそも事件を起こした連合赤軍は、京浜安保連合と共産主義者同盟赤軍派が統合して誕生した、新左翼武装戦闘組織。当時は学生運動も下火になっており、ゆえに「武装によって革命を断行するという」過激な思想に、歯止めがかからなくなっていた。

メンバーは全員で29人。そのうち12人が集団リンチによって殺害された。群馬県内のアジト「榛名山ベース」で“総括”という名目のもと、反共産主義的な態度を示した者、規律違反した者、脱走しようとした者が静粛されたんである。

最終的にメンバーは5人まで弱体化したが、警察の追求をかわして長野県軽井沢町に逃走。人質をとってたてこもり、あさま山荘事件を起こすのである。やぶれかぶれの最後っ屁みたいなものだ。

映画『突入せよ! あさま山荘事件』(2002年)において、当時の新左翼、連合赤軍がどのような立場にあったのかは全く説明されていない。これはなかなか思い切った戦略だと思う。

思想的背景を削除することによって、物語の効率化をはかっているのだ(ここまで省略してしまうと、逆に新左翼に対する嫌悪感が映画からたちのぼってしまうような気もするが)。

そこから浮かび上がってくるのは、互いのプライドが火花を散らす警視庁と長野県警の対立であり、端的に行ってしまえば組織論である。

あらゆる思惑やしがらみが絡み合う警察機構の独善的な体質、そこから生じるジレンマが映画を牽引するキーポイントとなり、「内部に確執を抱えながらも的確にミッションを遂行していく」という物語が綴られる。

しかし。僕は徹頭徹尾、原作者である佐々淳行の自慢話を聞かされているような気がしてならなかった。そもそも原作が自分の自慢話なんだから仕方ないが(読んだことないけど)、これって結局「最前線に立ってあさま山荘事件を解決したのは自分デス!」というお話なんであって、苦難の道を歩んでいくことを指す「ヘラクレスの選択」なんぞ、非常に自己愛に満ちた言葉であると思う。

どのようにして事態を収拾し、士気を高め、命令系統を確保し、マスコミ対策を講じるのか。役所広司という日本屈指のアクターが体現する佐々淳行は、かかる難題を卓越した行動力と知性で解決していく。その手際があまりにヒロイックすぎて、僕は逆に嫌悪感を感じてしまうんである。

原田眞人の演出意図もよく分からず。緊迫した捜査会議のシーンでも、皆が新劇風のオーバーアクトで演技合戦を繰り広げるものだから、観ている観客にはどうしたってコント仕立てにしか見えない。

人質が生死の危険にさらされていてすでに民間人に犠牲者が出ているというのに、決行作戦前には何故か明るいマーチ風の音楽がかかったりする。

人間の死が映画というシステムに還元され、感傷に浸る余裕を与えないというのは、『ダイ・ハード』(1988年)等のアクション映画に代表される、ハリウッド映画の特性。

ひょっとしたら原田眞人が目指しているのは、カット割りの多さといい、ヒーロー至上主義的な作風といい、まさにハリウッド映画なのかもしれない。

DATA
  • 製作年/2002年
  • 製作国/日本
  • 上映時間/130分
STAFF
  • 監督/原田眞人
  • プロデュース/原正人
  • 原作/佐々淳行
  • 脚本/原田眞人
  • 撮影/阪本善尚
  • 美術/部谷京子
  • 編集/上野聡一
  • 音楽/村松崇継
  • 照明/大久保武志
  • 録音/中村淳
  • 助監督/村上秀晃
CAST
  • 役所広司
  • 宇崎竜童
  • 伊武雅刀
  • 串田和美
  • 松岡俊介
  • 池内万作
  • 矢島健一
  • 豊原功補
  • 篠原涼子
  • 松尾スズキ
  • 遠藤憲一
  • 椎名桔平
  • 天海祐希
  • 藤田まこと

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