時制がアトランダムに変化する、テレンス・スタンプの“オマージュ映画”
ムショ帰りの中年英国ヤクザ、ウィルソン。彼は一人娘ジェニーの不可解な死を知り、ロサンゼルスに乗り込む。やがて彼女の死の背景に巨大シンジケートの存在を知った彼は、単身殴り込みをかけるのだった…。
『メメント』(2000年)では10分毎に時制がフラッシュバックしたが、『イギリスから来た男』は時制がアトランダムに変化する。その時間軸のバラシ方は、論理的というよりは感覚的。
並の作り手では小手先だけの演出に終わってしまうが、スティーヴン・ソダーバーグの手にかかれば、あらフシギ。実にスタイリッシュでクールな手触りが心地いい、パンキッシュなキタノ映画とも言うべき仕上がり。特に目新しいという訳でもないストーリーに、強烈なインパクトを与えている。
しかしこの映画を支えているのは、テレンス・スタンプ翁の渋すぎる演技。狂気を内に秘め、スタティックなバイオレンスを体現(まさにキタノ映画)。
テレンス・スタンプはやたらカッコ良く、テレンス・スタンプはひたすらカッコ良く、テレンス・スタンプはどこまでもカッコ良いのである(ひ弱な悪役を演じているピーター・フォンダとはエライ違いだ)。
どーこー言おうと、これはテレンス・スタンプのためのオマージュ映画だ。という訳で、全国津々浦々のテレンス・スタンプファンは、女房を質に入れてでも観るべし。
ちなみに作品にチラッと出てくるテレンス・スタンプの若き日の姿は、彼自身が67年に出演したイギリス映画『夜空に星のあるように』のワンシーンだそうです。
- 原題/The Limey
- 製作年/1999年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/89分
- 監督/スティーヴン・ソダーバーグ
- 製作/ジョン・ハーディ、スコット・クレイマー
- 脚本/レム・ドブス
- 撮影/エド・ラッハマン
- 音楽/クリフ・マルティネス
- 音楽監修/アマンダ・シーアデム
- 美術/ゲイリー・フラットコフ
- 編集/サラ・フラック
- 衣装/ルイーズ・フログレイ
- テレンス・スタンプ
- レスリー・アン・ウォーレン
- ピーター・フォンダ
- バリー・ニューマン
- ジョー・ダレッサンドロ
- ビル・デューク
- ニッキー・カット
- アメリア・ハインル
- メリッサ・ジョージ
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