原発の危険性を警鐘する社会派サスペンス
渋谷アップリンクで『監督失格』を観た帰り道、東急本店近くで山本太郎に出くわした。気のいいアンちゃん役で、テレビや映画で引っ張りだこだった彼も、今では反原発活動家としてワイドショーを賑わしている。
僕は「3.11が、一人の俳優の人生を劇変させたのだなあ」と感慨にふけり、「そもそも、原発の危険性を警鐘する映画は存在しなかったのか?」と想いを馳せ、そのままTSUTAYA渋谷店に足を運び、原発サスペンス『チャイナ・シンドローム』(1979年)をレンタルしたんである。
おおまかな粗筋は、こんな感じ。女性テレビキャスターのキンバリー・ウェルズ(ジェーン・フォンダ)は、原子力発電所の取材でコントロールルームを見学している最中、偶然にトラブルの現場に立ち会ってしまう。
撮影フィルムを専門家にみせたところ、重大な事故が起きる寸前だったと明言。キンバリーは、技師ジャック・ゴデル(ジャック・レモン)の助力を得て、この事故をテレビで公表しようとする…。
この映画が公開されたのは1979年3月16日だが、それからわずか12日後の1979年3月28日に、スリーマイル島原子力発電所事故が発生。
環境汚染が少ない(二酸化炭素を排出しない)、コストが安い、原料となるウランが安定供給できる、というメリットから原子力発電を推進してきた人類は、核エネルギーが諸刃の剣であることを思い知らされたのだ。
タイトルの『チャイナ・シンドローム』は、「アメリカの原子力発電所がメルトダウンを起こしたら、地球を突き抜けて真裏の中国まで熔けていってしまう」という仮説から採られたものだが、実際に3.11を通過した我々日本人からすると、極めてヴィヴィッドなイシューとして眼前に突きつけられる。
だが、社会派サスペンスとしてのメッセージ性を持ちながらも、映画はあくまで娯楽大作としての王道を貫いているのだ(ここ重要)。地味ながらカー・チェイスもあったりして、手に汗握る展開もアリ。
いま山本太郎がすべきは、この映画をなるべく数多くの日本国民に観てもらうために、プロパガンダを立ち上げることかもしれない。
- 原題/The China Syndrome
- 製作年/1979年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/122分
- 監督/ジェームズ・ブリッジス
- 製作/マイケル・ダグラス
- 製作総指揮/ブルース・ギルバート
- 脚本/マイク・グレイ,T・S・クック、ジェームズ・ブリッジス
- 撮影/ジェームズ・A・クレイブ
- プロダクションデザイン/ジョージ・ジェンキンス
- 衣装/ドンフェルド
- 編集/デヴィッド・ローリンズ
- 音楽/スティーヴン・ビショップ
- 舞台装置/アーサー・ジェフ・パーカー
- ジェーン・フォンダ
- ジャック・レモン
- マイケル・ダグラス
- ダニエル・ヴァルデス
- ジム・ハンプトン
- ピーター・ドゥナット
- スコット・ブラディ
- ウィルフォード・ブリムリー
- ルイス・アークエット
- リチャード・ハード
- スタン・ボーマン
- ジェームズ・カレン
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