マラソンマン/ジョン・シュレシンジャー

マラソン マン [Blu-ray]

“徹底的に純化された悪”をサー・ローレンス・オリヴィエが演じる、サスペンス巨編

ウィリアム・ゴールドマンといえば、『明日に向って撃て!』(1969年)、『大統領の陰謀』(1976年)でアカデミー脚本賞を受賞した、ハリウッドきっての名脚本家。しかし、もともとは小説家だったという出自は意外と知られていない。っていうか、僕もさっき調べて知りました。

ゴールドマンが1974年に発表したサスペンス小説を彼自身が脚色し、『真夜中のカーボーイ』(1969年)や『イナゴの日』(1975年)で知られるジョン・シュレシンジャーが監督を務めたサスペンス・アクション映画が、この『マラソンマン』(1976年)である。井上正治の同名マンガではないので念のため。

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ジョン・シュレシンジャーによる抑揚の効いた演出は、硬質でタイト。過去のトラウマやアベベに心酔する心情が表出されないぶん、ダスティン・ホフマンの行動規範がいまひとつ分かりにくいのは確かだが、ベトナム戦争後を背景にした鬱屈とした空気、反体制的なアナーキズムが、このフィルムには濃厚に刻印されている。

『ダーティーハリー』(1971年)や『フレンチ・コネクション』(1971年)などに代表される、’70年代サスペンス映画をこよなく愛する小生としては、もうそれだけでOKです。しかしまあこの作品は何と言っても、“白い天使”ゼルを圧倒的な存在感で演じる名優サー・ローレンス・オリヴィエに尽きるだろう。

フランクリン・J・シャフナーの『ブラジルから来た少年』(1978年)では、ナチスの再興を食い止めんとするユダヤ人を演じていたオリヴィエだが、本作では真逆の役柄となるアウシュヴィッツ強制収容所の歯科医役を、嬉々として演じている。

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相対主義が普遍化し、単純な善悪二元論が死滅して久しい現在にあって、“白い天使”ゼルは問答無用の絶対悪。

この「徹底的に純化された悪」に、持ち前のエレガントさとノーブルさを注ぎ込み、オリヴィエは問答無用なEvilを誕生させた。「Is It Safe?」というセリフだけで恐怖を感じさせることのできる役者はそうはいない。

《補足》
個人的に一番好きなシーンは、ロイ・シャイダーを暗殺せんとする東洋アサシンの顔が、カーテンからうっすらと浮かぶところ。これはもう完全にキャスティングの勝利でしょう。

DATA
  • 原題/Marathon Man
  • 製作年/1976年
  • 製作国/アメリカ
  • 上映時間/125分
STAFF
  • 監督/ジョン・シュレシンジャー
  • 製作/ロバート・エヴァンス、シドニー・ベッカーマン
  • 原作/ウィリアム・ゴールドマン
  • 脚本/ウィリアム・ゴールドマン
  • 撮影/コンラッド・L・ホール
  • 音楽/マイケル・スモール
CAST
  • ダスティン・ホフマン
  • ローレンス・オリヴィエ
  • ロイ・シャイダー
  • ウィリアム・ディヴェイン
  • マルト・ケラー
  • フリッツ・ウィーヴァー
  • リチャード・ブライト
  • マーク・ローレンス
  • アレン・ジョセフ

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