突き抜けるような青空と牧歌的な音楽で思考停止にさせられる、トンデモ映画
『ナビィの恋』(2005年)は、60年ぶりに初恋の相手と再会したナビィおばあちゃんが、おじいちゃんを捨てて駈け落ちしてしまうという、トンデモ映画。
冷静に考えると、オニのように残酷な設定なんだが(冷静に考えなくてもじゅうぶん残酷だけど)、舞台が沖縄ということだけでオールオッケー。
何てったって、ヒロインの奈々子が、「おばあちゃん、行かないでー!!恵達おじいちゃんはどうするのー!?」と叫ぶと、「おじいちゃんはまだ若いから大丈夫!」と平然と言い返すのである。つまり、
沖縄の人はたぶん、泡盛飲んで三味線弾いて、ゆったりとした時間のなかで生きているんだろうなあ~
沖縄の人はたぶん、他の日本人とはちょっと感覚が違うんだろうなあ~
沖縄の人はたぶん、自分の感情に対してとっても素直なんだろうなあ~
沖縄の人はたぶん、あっけらかんとしていて、くったくがないんだろうなあ~
という、ロジックとも言い切れないロジックで、思いっきり不倫に走るナビィおばあちゃんを正当化できてしまうのだ。うーむ、ずるい。ずるいんだけどそのずるさも手が込んでいて、実はこの映画、半分ミュージカル仕立てになっている。
琉球民謡、ケルト民謡といったお気楽BGMを全編に流し、観客に「ま、いっかー」と思わせてしまう魔術的効果を発揮してしまう。
言っていることがほとんどエロじじいの恵達おじいちゃんを演じているのは、沖縄民謡界の重鎮・登川誠仁だし、テーマ曲を担当したのは、かのマイケル・ナイマンだったりする(どういう流れでこの仕事を引き受けたんだ?)。突き抜けるような青空と、牧歌的な音楽で思考停止にさせられてしまうのだ。
という訳で『ナビィの恋』は、愛を貫くためにアイシテルランドへ逃避行する老男女を描いた、ハッピー・サッドな物語である。とりあえず西田尚美がかわいくてエロいから、そういう観点からして観てソンのない映画だと思います。
- 製作年/2005年
- 製作国/日本
- 上映時間/123分
- 監督/中江裕司
- 製作/竹中功、佐々木史朗
- プロデューサー/石矢博
- 脚本/中江裕司、中江素子
- 原案/中江裕司
- 音楽/磯田健一郎
- 美術/真喜屋力
- 編集/宮島竜治
- 衣装/小川久美子、澤いずみ、金城美香
- 録音/井家眞紀夫
- 照明/上保正道
- 装飾/秋田谷宣博
- 助監督/土岐佳嵩
- 西田尚美
- 村上淳
- 平良とみ
- 登川誠仁
- 平良進
- 津波信一
- 兼嶋麗子
- アシュレイ・マックアイザック
- 嘉手苅林昌
- 大城美佐子
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