ポルターガイスト/トビー・フーパー

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“誰一人死者を出さないホラー映画”という超ハードルの高い要求に果敢にチャレンジした作品

今やすっかり呪いの映画として定着している、『ポルターガイスト』(1982年)。それもそのはず。キャロル・アン役のヘザー・オルークが12歳で急死、長女ダナ役のドミニク・ダンが交際相手に首を絞められて22歳で死亡するなど、鬼籍に入った映画関係者は数知れず。

おまけに『ポルターガイスト2』(1986年)ではケイン牧師役のジュリアン・ベック、祈祷師テイラー役のウィル・サンプソンが映画公開前後に亡くなっていたりして、もはやこのシリーズの製作そのものが命がけ。

だが映画の内容自体は、キビしいレーティング回避のためにホラー的要素は最小限に抑えられ、ファンタジックなファミリームービーとしての色合いが濃い作品だ。

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『悪魔のいけにえ』(1974年)で名を上げたトビー・フーパーが監督としてクレジットされているものの、クリエイティブの実権を握っていたのは、製作、脚本に名を列ねているスティーヴン・スピルバーグ。

そもそも彼がトビー・フーパーに監督を任せたのは、自身が『E.T.』(1982年)の製作で多忙を極めていたからなのだが、噂ではわざわざ『ポルターガイスト』のロケ地を『E.T.』と同じカリフォルニア州の住宅街に指定して、頻繁に撮影現場を訪れては口出ししまくったとか、してないとか。

そういや、ヤケに町並みの風景が『E.T.』と似ているもんねえ。

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『E.T.』(スティーヴン・スピルバーグ)

確かに『ポルターガイスト』には、スピルバーグ的タッチが数多く見受けられる。未知なるものを“光”に託して描くのは彼の十八番だが、特に中盤で光のプリズムを発しながら心霊たちが現れるシーンは、『未知との遭遇』にも近似した神秘的なイメージ。

序盤まではフリーリング一家が、ポルターガイスト現象を怖がるというよりは楽しんでいるという感じも、スピルバーグ的素描と言えるだろう。

かといって“スピルバーグ的なるもの”が“トビー・フーパー的なるもの”に完全に凌駕されているかと言えばそんなことはない。

超心理学研究チームの一人が洗面所で顔を洗っているとボロボロと皮膚が崩れ落ちていく、なんていう子供が観たら卒倒しそうなシーンも抜かりなくインサートされてるし、母親のダイアンが風呂に入るというムダにエロいシーンでも、デ・パルマ的なサスペンスの増幅が図られている。

だが個人的には、母親が何食わぬ顔で小鳥の死骸をトイレに流してしまおうとするシーンが一番残酷かと思います。この映画、人間たちのアンチモラルに対して心霊が復讐を果たすという構図にもなっているのだ。

考えてみれば『ポルターガイスト』は、“誰一人死者を出さないホラー映画”という超ハードルの高い要求に果敢にチャレンジした作品な訳で、それ自体は特筆に値すべきことだと思う。現実にはいっぱい死人が出てしまいましたが。

DATA
  • 原題/Poltergeist
  • 製作年/1982年
  • 製作国/アメリカ
  • 上映時間/115分
STAFF
  • 監督/トビー・フーパー
  • 製作/スティーヴン・スピルバーグ、フランク・マーシャル
  • 脚本/スティーヴン・スピルバーグ、マイケル・グレイス、マーク・ヴィクター
  • 音楽/ジェリー・ゴールドスミス
  • 撮影/マシュー・レオネッティ
  • 編集/マイケル・カーン
  • 美術/ジェームズ・H.スペンサー
  • SFX/リチャード・エドランド
CAST
  • クレイグ・T・ネルソン
  • ジョベス・ウィリアムズ
  • ドミニク・ダン
  • オリヴァー・ロビンス
  • ヘザー・オルーク
  • ビアトリス・ストレイト
  • ゼルダ・ルビンスタイン
  • リチャード・ローソン
  • ジェームズ・カレン
  • マイケル・マクマナス
  • ヴァージニア・カイザー

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