『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』に代表されるPOV方式を、モンスター映画というジャンルで提示した『クローバーフィールド/HAKAISHA』は、フェイク・ドキュメンタリーがエンターテインメント映画の新しい説話法であることを高らかに示した作品だった。
youtubeを積極活用した巧みなプロモーション展開も含め、プロデューサーを務めたJ・J・エイブラムスの見事な戦略勝ちだったんである。
『SUPER8/スーパーエイト』も、もともとは『クローバーフィールド/HAKAISHA』のプリクエルとして始動した企画だったらしい。
しかしプロットを詰めていく段階で、’70~’80年代SF映画へのリスペクト精神に溢れたオマージュ的映画に変質し、スティーヴン・スピルバーグがプロデューサーに加わったことから、『未知との遭遇』や『E.T.』を彷彿とさせる、スピルバーグ・トリビュート・フィルムにリ・ボーン。
かつてスピルバーグは、ジェームズ・リプトンがホストを務めるTV番組『アクターズ・スタジオ・インタビュー』で、「あなたの映画で最もスピルバーグを象徴するショットは何ですか?」という問いに対し、「『未知との遭遇』で少年が空を見上げるシーンだ」と語っている。
無垢な子供が呆然と天空を見つめる構図は、いわゆる“スピルバーグ・ショット”として知られているが、確かに『SUPER8/スーパーエイト』にも8mm少年たちが空を見上げるカットが印象的に使われている。
「片親の不在」は『E.T.』や『インディ・ジョーンズ』シリーズでも繰り返し変奏されてきたモチーフだし、怪物のフルショットをなかなか見せないジラシ演出は、『ジョーズ』(1975年)や『ジュラシック・パーク』(1993年)でもお馴染みのタッチ。
そもそも舞台となるオハイオ州は、スピルバーグの生まれ故郷だ。主人公のジョー・ラム達が撮影している自主映画がゾンビもので、ジョージ・A・ロメロにも目配せしているあたりもこづらにくし!
だが同時に『SUPER8/スーパーエイト』は、1966年生まれのJ・J・エイブラムス自身を真っ正直に引き写した映画でもある。
スピルバーグに負けず劣らず8mm小僧だったエイブラムス少年が、映画内の子供達と同年齢だったのが1979年。
今やアマチュアのみならずプロの世界でもデジカム撮影が主流となってきているが、8mm映画出身の最初のスター監督スピルバーグと、最後のスター監督J・J・エイブラムスが手を組んだというのは、いわば時代的要請だったのかもしれない。
70年代後半~80年代のアメリカ映画を観て育ってきた僕の世代にとって、『SUPER8/スーパーエイト』はノスタルジックな感慨を抱かせるポップコーン・ムービーだ。
有名スター俳優が誰一人出ていないことや、ジョン・ウィリアムズを丸パクリしたかのようなサウンドトラックをあえて使用していることで、映画には良い意味でのB級っぽさが横溢している。
エイリアンの造形感覚や、クライマックスの食い足りなさなどを弱点に挙げる諸兄もおられるだろうが、個人的にはここまで徹底的にやってくれれば及第点。
まだ年端もいかない子供ながら、かつてのナスターシャ・キンスキーのごとき色気を発散するエル・ファニングの妖演ぶりにもココロもってかれてしまいました。
- 原題/Super 8
- 製作年/2011年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/111分
- 監督/J・J・エイブラムス
- 製作/スティーヴン・スピルバーグ、J・J・エイブラムス、ブライアン・バーク
- 製作総指揮/ガイ・リーデル
- 脚本/J・J・エイブラムス
- 撮影/ラリー・フォン
- プロダクションデザイン: マーティン・ホイスト
- 衣装デザイン: ハー・ヌウィン
- 編集/メリアン・ブランドン
- メアリー・ジョー・マーキー
- 音楽/マイケル・ジアッキノ
- ジョエル・コートニー
- エル・ファニング
- カイル・チャンドラー
- ライリー・グリフィス
- ライアン・リー
- ガブリエル・バッソ
- ザック・ミルズ
- ロン・エルダード
- ノア・エメリッヒ
- ジェシカ・タック
- ジョエル・マッキノン・ミラー
- グリン・ターマン
- リチャード・T・ジョーンズ
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