電脳都市を徘徊する、未来進行形ポップ・ソング
電脳都市を徘徊する、未来進行形ポップ・ソング。極彩色のストリングスが、シンセサイザーに溶け込み、美しき音塊がカラフルでソリッドなグラデーションを形成する…。
浪速のソウルシンガー・チャカと、個人でフェアライトを所有していたという筋金入りシンセ野郎・松浦雅也によるユニット、PSY・Sのサウンドを形容するなら、こんなところか。
80年代は日本でもエレ・ポップが大量発生した時代でもあるが、PSY・Sはそのトップランナーとして時代を駆け抜けた。
超高音キーを自在に操るチャカのエンジェル・ボイス。パワフルだが、ウェットではない。彼女の存在は、松浦雅也の2進数的打ち込みサウンドを、素数的叙情サウンドに変質させる、強力なコンバーターだ。聴くものに叙情的風景を思い起こさせる、その引力。
しかし哀しいかな、チャカこと安則まみは、ビジュアル的に天童よしみにクリソツであったのである!これが、PSY・Sがメジャーになり切れなかった最大の要因といっても過言ではありますまい。
世間的に人気の高いアルバムは、緻密なサウンド・プロダクションが聴く者を圧倒する『NON-FICTION』(1988年) あたりなんだろうが、個人的には、耳触りのいいキャッチーなナンバーがコンパイルされている『Mint-Electric』(1987年)が好みである。
特に5曲目に収録されている『レモンの勇気』は、「モーニング娘。」のフロントガール安部なつみによってカバーされたほどの名曲。サエキけんぞうが作詞を担当した、叙情的テクノポップだ。
PSY・Sが産み落とした音楽は、21世紀になった今、J-POPのトップ・アイドルによって引き継がれたのだ。
嗚呼、もしチャカのルックスが安部なつみ似であったなら、PSY・Sは80年代を代表する超メジャーユニットだったろう。しかし惜しいかな、チャカは天童よしみ似であった(二度目)。やっぱりビジュアルは、極めて大切な要素なんである。
後年、チャカはソロとして活躍。松浦は故伊丹十三監督のホラー映画『スウィートホーム』(1989年)のサントラを担当した後、プレイステーションのゲーム『パラッパラッパー』(1996年)を手掛けた。お陰で松浦は一躍スーパーリッチに。
やっぱり世の中、先立つものはマネー、マネー、マネーである(ここ重要)。
- アーティスト/PSY・S
- 発売年/1987年
- レーベル/ソニーミュージックエンタテインメント
- Simulation
- 電気とミント
- 青空は天気雨
- TOYHOLIC
- Lemonの勇気
- Sweet Tragedy
- Long Distance
- Cubic Lovers
- ガラスの明日
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