『モテキ』(2011)
映画考察・解説・レビュー
『モテキ』(2011年)は、久保ミツロウの同名漫画を原作に、大根仁がメガホンを取った恋愛群像劇。30歳を前にした派遣社員・藤本幸世は、恋愛経験の少ない日々を送っていたが、ある日突然、複数の女性から連絡を受け“モテ期”が到来する。編集者のみゆきをはじめ、過去に関係のあった女性たちと再会を重ねるうちに、彼は自分の未熟さと向き合い、仕事と恋愛の間で揺れ動く。
非モテ男子の夢と欺瞞
ライターの故・川勝正幸が猛プッシュしていたこともあり、『去年ルノアールで』(2007年)、『週刊真木よう子』(2008年)、『湯けむりスナイパー』(2009年)などを手掛けた大根仁が、注目の映像クリエイターであることは承知していた。
リミックス感覚の映像表現+男の子スケベ目線+溢れるサブカル愛+卓越した音楽センスで、文科系ボーイズ&ガールズの熱い支持をゲット。
「月9」なんぞ蹴散らすくらいに、民放で今最もキテるドラマ枠『ドラマ24』(テレビ東京)で、久保ミツロウ原作のマンガ『モテキ』(2010年)が大根仁監督でドラマ化されると聞いたときは、期待で思わず小躍りしたものだ!
実際『モテキ』は、小生の2010年ベスト・ドラマである。三十路間近のイケてない派遣社員・藤本幸世(森山未來)が、突然ふりかかってきたモテ期に右往左往するサマは、世の童貞男子(&童貞気質男子)ならツボること必至の、一大エンターテインメント。
しかも女優陣がサイコーである。土井亜紀役の野波麻帆は、濃縮100%のエロさが辛抱たまりませんし、バツイチ・ヤンキー林田尚子役の菊地凛子は、男前気質と溢れる母性を併せ持っている。
小宮山夏樹役の松本莉緒は、いかにも一発ヤレそうな“ゆるふわ”オーラがダダ漏れで、中柴いつか役の満島ひかりに至っては、神レベルの演技。
という訳で小生、毎週金曜日の0時12分から正座スタンバイし、キャッキャキャッキャしながら楽しく鑑賞したんであるが、どうしてもある問題が回を追うごとに顕在化してきて、正直終盤になると生理的に辛くなってしまった。
『モテキ』最大のウィークポイント、それは主人公・藤本幸世に1ミクロンたりとも感情移入でき~ん!!!ということにある。
彼は実は非モテ男子ではなく、モテ期を利用して群がってくる女の子たちを全員食っちまおう!とする、肉食男子(でもメンタルは超薄弱)なんであって、その身勝手さ、オトコとしての未成熟さにイライラしてしまうのだ。
愛すべき構造的バグ
この構造的欠陥が、今回の映画版になるとさらにエスカレート。長澤まさみ、麻生久美子、仲里依紗、真木よう子というビューティフル・ガールズが幸世の前に現れ、トキメキデイズ・チャプター2が再起動するんだが、来る者は拒まず状態だったドラマ版と違い、映画版では幸世は最初から長澤まさみにロック・オン(僕もそうします!)。
しかし、その気もないのに麻生久美子と一晩を共にし、彼女をすっかりその気にさせた挙げ句、「っていうか重いんだよ!」と鬼畜コメントをブチかます。
モラル・ハザードはさしおいて、「これがオトコの本質なのだ!」という製作サイドの確信犯的手つきなのかもしれないが、娯楽作品を標榜している映画において、主人公に嫌悪感を覚えさせる…というのは、明らかに戦略ミスなんではないか。
巷では賛否両論、主に「否」が多い…というエンディング問題についても、僕は断然「否定派」であります。確かに、セカチュー・コンビが泥だらけになりながら口づけを交わし、ミラーボールが煌めくなかカメラが360°パンする映像は高揚感に溢れている。
しかしながらそれに至るまでのプロセスは全くもって理解不能で、仕事を放棄して長澤まさみを追いかける森山未來にも、最終的に彼を受け入れる長澤まさみにも、どっちにも感情移入できないのだ(っていうか、『幸世くんだと成長できないの』とか言ってなかったか?お前?)。
結局のところ『モテキ』においては、モテない奴=いい奴、モテる奴=嫌な奴、という単純な方程式が根幹なのであって、逆にモテない奴がどれだけ残虐非道な限りを尽くしてもOKだし、モテる奴がどんなに仕事を頑張っても、最終的に足をすくわれてしまうのである。
まあ確かに、金子ノブアキなんていかにもザ・モテメンって感じだし、我々非モテ族からするとパブリック・エネミーではありますが。
すべてを救う、長澤まさみという奇跡
とまあ、いろいろ批判めいたコメントをいろいろ申し上げてきましたが、『モテキ』映画版はある一つのファクターにおいて、必見の作品であることもまた間違いないんである。つまり、長澤まさみはアルマゲドン級に可愛ええーーー!ってことである。
予告編では「殺人級にキュートな笑顔を持つ雑誌編集者」というキャッチフレーズがつけられていたが、激しく同意。サブカルの聖地・下北沢ヴィレッジ・バンガードで会うなり「意外にかっこいいじゃーん!」なんて言われたら、それだけで完全ノック・アウトだ。
何でもDVD版に「みゆきの部屋」なる特典映像がついているらしいが、この内容がスゴい。長澤まさみとの居酒屋デート・シーンが幸世の主観で撮られており、まさみの笑顔&胸元&足への目線が忙しく(&エロく)動き回る、というのだ。
しかも大根仁自らカメラを担当しているというから、我々の期待を裏切らない出来になっていることは間違いなし。はっきりいって『モテキ』映画版、これだけでオール・オッケーだったんじゃね?という気もしてくる今日この頃。
《捕捉》
僕は『モテキ』を観るために一人いそいそと平日夜の新宿ピカデリーに赴いたんだが、観客は童貞&セカンド童貞どころか、イケてるカップルばっかで、僕もカップルに両端を挟まれるという状態に。ファッ~~ク!この映画、テーマからして「カップル禁止」のR指定にして頂きたい。
- モテキ(2011年/日本)
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